いま大注目の高配当株 最新事情とトリセツ(1)その高配当にはワケがある

岡田禎子
2023年3月8日 8時00分

Africa Studio / Adobe Stock

高配当株が投資家の人気を集めています。アメリカの利上げが長期する影響で株式相場に不透明感が増す中、下落相場に強く、業績も良くて配当利回りも高い銘柄が、過去最高レベルでゴロゴロと転がっているのです。

なぜ高配当株に注目が集まるのか?

世界的な景気減速・後退懸念やウクライナ紛争など、マーケットが先行き不透明ないま、高配当株に投資家の熱い視線が注がれています。

理由のひとつに、高配当株は市場環境が不安定なときに優位性を発揮しやすい、という点があります。不確実な値上がり益に比べて配当による収入は着実であることや、株価が下がる局面では配当利回りが高まり、配当が株価の下値支えに一定の役割を果たすためです。

2022年は米FRB(連邦準備制度理事会)が急ピッチの利上げをしたために、株式市場は下落相場を余儀なくされましたが、その逃避資金の受け皿となったのが高配当株でした。

2023年も、FRBの利上げの長期化や、景気減速が深刻化することへの懸念、さらには日銀の金融緩和政策の修正による金利上昇の可能性が高まっている環境下では、今後も高配当株の優位な展開が続くとみられています。

企業も株主還元策を強化中

さらに、企業も株主還元を積極化しています。2023年3月期は3社に1社が増配を予想しており、日本企業の配当総額は14兆円超えの過去最高を更新する見通しです。

また、アクティビストによるPBRの低い企業への増配促進の動きが活発化していることや、東京証券取引所がPBRの低すぎる企業に改善を求める方針を発表したことも追い風となって、この傾向は今後も続くと考えられます。

こうした要因が重なって、現在のマーケットには「高配当かつ業績も良い銘柄」が、かつてないほど存在しているのです。

新NISAで高配当株の人気もアップ?

2024年、NISA(少額投資非課税制度)が大きく改正されます。

今回の改正の最大のポイントは、非課税枠が拡大され、非課税期間が無期限化されることです。つみたて投資枠(年間120万円)と成長枠(年間240万円)を同時に利用することができるようになり、年間360万円を非課税で投資可能になります。

この非課税投資枠には「生涯非課税投資枠」が設定されますが、その上限は1800万円。そのうち個別株で利用できるのは成長投資枠部分の最大1200万円です。この1200万円の投資先として、特に人気が集まりそうなのが、高配当株です。

なぜなら、NISA枠は配当金も非課税だからです。

例えば、この上限1200万円を、配当利回り5%の高配当株に投資した場合、配当金60万円が非課税で手に入ります。これは魅力的。さらに値上がり益も狙えれば、キャピタルゲイン&インカムゲインをどちらも非課税で長期にわたって運用できます。

2024年が近づくにつれて話題となり、高配当株人気に一層拍車がかかるかもしれません。

最新・高配当株ランキング

いま最高に盛り上がっている高配当株。現時点での配当利回りランキングを見てみましょう。ちなみに「高配当株」とは一般的には3%以上の配当利回りのある株を指します。

現在(3月7日終値ベース)の配当利回りトップ企業は商船三井<9104>です。配当利回りは驚異の15.64%! 東証プライムの平均配当利回りは2.63%ですから、その高配当ぶりが際立ちます。

配当利回りは、次の式で求めます。

  • 配当利回り(%)=年間の配当予想額÷現在の株価

商船三井の1株あたりの年間予想配当額は560円です。例えば100株を購入する場合、株価3,580円なので必要投資金額は35万8000円。これに対して、計5万6000円の配当金を手に入れることができる、というわけです。

1位に続いて2位3位も大手の海運株がランキングを独占していますが、これは、コロナ禍に海上運賃の大幅上昇に伴って各社そろって大幅増益となったためで、つまりは「特需」によるもの。同様に、3位の三井松島ホールディングス<1518>も、石炭価格の急騰による大幅増益が背景にあります。

これら海運株や資源関連銘柄などの市況関連銘柄では、その業績は市況に大きく左右されます。過去の業績や株価、配当の推移を見ていくと、年によって増減が激しく、利回りが高いからといって安易に飛びつくにはリスクのある銘柄群だということがわかります。

7位の東芝<6502>はアクティビスト(いわゆる「物言う株主」)の影響で大幅な増配をおこなっており、8位の日本たばこ産業JT)<2914>は2021年に上場来初の減配をおこなったものの、2022年12月期は3年ぶりの増配予定です。

高配当にはワケがある

このように、ランキングの上位に来るような銘柄には「何かしらの理由」があるものです。

マーケットでは、配当利回りが6%を超えるような銘柄は減配・無配リスクが潜んでいる可能性が高いと考えられています。つまり、高すぎる利回りの株は「ワケあり」の可能性大と認識して、その視点で銘柄選択をおこなっていくことが肝要となります。

では、安定した投資先としての高配当株を選ぶには、どうすればいのか? 押さえておきたいポイントと銘柄選びのヒントについては、次の記事で。

いま大注目の高配当株 最新事情とトリセツ(2)負けない高配当株の選び方

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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