苦境に立つ業界、疫禍からの回復、また新たな逆風… 2023年の株式市場を戦った銘柄たち
《日経平均株価が33年ぶりの高値を更新した2023年の株式市場。具体的に、どんな銘柄が注目を集めたのでしょうか。かぶまど執筆陣が2023年相場で気になった銘柄を振り返ります》
【特集】相場をにぎわせた「今年の銘柄」2023
- 月を目指すベンチャーか、安く生まれた高配当株か。2023年のIPO市場をにぎわせた銘柄たち
- やはり強かった半導体株と、ついに目覚めた鉄鋼株。2023年の株式市場を牽引した銘柄たち
- 生成AIやリスキリングの関連株が買われ、MBOが急増。2023年に注目を集めたテーマと話題
- マグニフィセント・セブンだけじゃない。2023年のアメリカ株式市場で活躍した銘柄たち
- 苦境に立つ業界、疫禍からの回復、また新たな逆風… 2023年の株式市場を戦った銘柄たち
業界の苦難に立ち向かうリーダー
・東和薬品<4553>
ジェネリック医薬品業界は、長らく首位を走り続けた日医工<4541:3月に上場廃止>の「出荷試験工程の不正」の表面化を契機に、苦境に晒されている。東和薬品<4553>にも“飛び火”が危惧された時期もある。だが、社内検査を経て「不正は断じてなし」の結論を早々に公にし、懸念を払拭した。
表現は適切でないかもしれないが、「大手の一角」の立ち位置にあった東和薬品は、日医工の一件により、業界のイメージ刷新の「リーダー役」、さらには、「ナンバーワン」の座を手に入れるチャンスを得た、とも言える。
株価は、夏場の急伸時に“窓を開けた”形となっている。開けた窓は埋め(閉め)なくてはならない。「埋めない窓はない」は、相場に伝わる教えのひとつだ。
だが、たとえそうなったとしても、高齢化社会の進行および社会保障費の増大という現状に、ジェネリック医薬品業界は低迷・足踏みから脱しなくてはならない。その意味で、東和薬品は「立ち直り」の牽引役となったのだ。
(選・千葉 明)
老舗にも負けない優等生
・パルグループホールディングス<2726>
2023年はコロナ禍からの経済活動の再開により、人々の外出機会が増え、衣料品の購買意欲も高まりました。アパレル関連銘柄は、業績改善が見込まれるとして大きな期待を集め、株価はそれに応えて大きく上昇しました。
なかでも、「3COINS」の展開する企業として知られるパルグループホールディングス<2726>は、上場来高値を更新するなど、老舗の三陽商会<8011>やオンワード<8016>にも負けない強い株価形成となりました。
10月にはEC販売強化が功を奏して大幅な上方修正を行い、営業利益率も大きく改善するなど、まさに業績は絶好調。株価も一段の上昇トレンド入りとなっています。業績改善が見込まれる業種で、業績が絶好調の会社ならば、素直に評価される、ということを示してくれた優等生な銘柄でした。
(選・岡田禎子)
《参考》「相場は相場に聞け」と言われても… 株価急上昇の陰で涙を吞んだ投資家の告白(選者とパルグループの、出会いから別れまでの切ない物語)
いまは逆風に耐えるとき
・資生堂<4911>
半導体株が相場を牽引する上昇を見せた一方で、景気の変動を受けにくいディフェンシブセクターの成長株のいくつかは、2023年は値動きが冴えませんでした。
そんな銘柄のひとつが、化粧品大手の資生堂<4911>です。株価は、2022年末から見ると約3割も値下がりしています。6月の年初来高値(7,160円)から右肩下がりの下落トレンドが続いており、本格的な反発ムードにはまだ先になりそうです。
主力市場のひとつである中国では、景気が減速しているに加えて、東京電力福島第一原子力発電所のALPS処理水を海に放出することに対する反感が強く、日本製品の買い控えも起きています。こうした影響を受けて、業績が悪化しているのです。
ほかにも花王<4452>や、アメリカ市場で言えばユニリーバ<UNA>やプロクター・アンド・ギャンブル<PG>、といった日用品・トイレタリーメーカーの株価も、2023年はあまり冴えませんでした。
これらの銘柄は、業績が安定していたことから、これまでは高いPER(株価収益率)まで買われていました。しかしここにきて、インフレによる消費の減速や原材料高などの逆風に晒されることとなり、株価は上値が重くなっています。
(選・佐々木達也)
《参考》2024年の株価はどうなる? 干支の相場格言「辰巳天井」どおり龍は昇っていくか?