9月の株価はどうなる? 下落傾向だからこそ狙いたいのは高配当株とイベント関連銘柄

岡田禎子
2023年9月2日 11時00分

hadeev / Adobe Stock

マーケットにはその月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。それらを知っておけば、どんな相場でもチャンスを見つけることができます。では、下落傾向が強い相場をチャンスに変えるための9月相場の特徴とは?》

9月相場は下落傾向が強い?

9月は下落傾向が強い月です。突発的なショックも起きやすく、警戒が必要です。

そんな中、月初には注目の日経平均株価の定期銘柄入れ替えの発表が行われ、月末にはそれに伴うリバランスが行われます。

上旬から中旬にかけては、9月末の3月期決算企業の配当取りも本格化します。ただ、メジャーSQ(8日)通過後は相場のムードがガラリと変わる可能性があり注意が必要です。

下旬には米FOMC(今年は19〜20日)が控えているほか、2023年はラグビーW杯、東京ゲームショウの関連銘柄も盛り上がりそうです。

米国株に警戒し、日本株を仕込む?

9月の米国株はアノマリー的には警戒すべき月となっています。というのも、ダウ平均株価は直近10年で4勝6敗、20年でも10勝10敗です。この間、株価は上昇相場だったわけですから、残念ながら、米国株にとって9月は調整月にあたる、といえそうです。

加えて9月は、いわゆるショックが起きやすいことでも知られています。2008年のリーマンショック、2021年の恒大ショック(中国)や2022年のCPIショック(米)などなど。

特に、多くの市場参加者が夏休みから戻る4日の「レイバーデー」明けは「相場の空気が変わる」と言われており、注意したいところ。リーマンショックが起きた2008年や2021年なども、レイバーデー明けから相場に変調の兆しが見え始めていました。

ただし、日本では状況が異なります。9月の日経平均株価は、直近10年では7勝3敗、20年では11勝9敗と持ち堪えている印象。さらに、秋口から年末にかけて日本株は上昇しやすい、というアノマリーもあります。

日経平均株価とダウ平均株価について、過去10年の8月末から12月末までの上昇率を比較してみると、確かに日本株に軍配が上がっていることがわかります。

こういったことを鑑みると、9月は日本株の仕込みの好機であり、特に突発的な要因で株価が暴落した際にはチャンス到来ともいえそうです。

9月の日経平均株価はどう動く?

では実際の日経平均株価はどのように動いたのでしょうか? 過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。

・2020年9月の日経平均株価

コロナワクチン開発に向けた臨床試験が一時中断となったことで、世界の景気停滞が長引くとの懸念が広がったこの時期。日本では、安倍首相の後任として菅首相が誕生し、経済・金融政策が引き継がれるとの見方が相場の下支えとなって、狭いレンジ幅での動きに終始しました。

・2021年9月の日経平均株価

月初に菅首相が退陣を表明し、月末の自民党総裁選へ向けての論戦で景気浮揚策への期待が高まったことから、日本株は上昇となりました。米国株が金利高懸念で冴えない中、日本株は内需主導で勢いづいた格好となりました。

・2022年9月の日経平均株価

インフレのピークアウト期待から日本株は持ち直していたものの、13日発表の米CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回り(CPIショック)、FRBの金融引き締めへの警戒感が強まって米国株は下落。日本株も“連れ安”となってしまいました。

「はじめ上昇、あと失速」のパターンの理由

過去3年間のチャートを見てみると、上旬から中旬にかけては上昇し、その後に失速するパターンが見て取れます。

もともと9月の日本株は、機関投資家が月末に自身の決算を控えているために積極的な買いが出にくい、という事情があります。そこに外的要因が加わると失速しやすい──という構図がチャートからも透けて見えます。

特にここ数年は、米FRBの金融政策への警戒感を強めた神経質な動きとなっています。昨年はCPIショック(13日)に始まりFOMCのショック(21〜22日)で終わったことも、記憶に新しいのではないでしょうか。

現時点では、9月は金利据え置きの可能性が濃厚ですが、それによって「利上げ打ち止め観測」が金融市場で強まるかどうかは未だ不確実。米CPIやFOMCの結果次第では、波乱の展開となる可能性もあるでしょう。注意して見守りたいところです。

高配当・連続増配銘柄に注目!

9月は月末に向けて、3月期決算企業の配当取りが本格化します。

配当取りとは、配当を受け取るために、決算期末の直前に株式を購入することです。9月末の権利付き最終日(=この日に購入すれば配当を受け取る権利を得られる)は27日、29日が権利確定日となります。

ただし、3月期決算企業のなかには、期末一括配当(=9月末の中間配当はなし)の企業や、3月末を多めに配分する企業もあるため、配当を狙うなら事前に確認しておきましょう。

また、海運株のような高配当利回り株は、配当取りを意識した動きによって株価が大きく上下しがちです。多くの短期筋が権利確定前に売り逃げたり、権利確定後に売り圧力が高まったり、と株価が急落する場面も過去にはありますので、慎重な取引を心がけましょう。

配当利回りが高い銘柄には、このように扱いが難しいもののほか、業績が悪く株価が下がっているため利回りが高くなっている銘柄も含まれます。

高配当利回りを狙うのもいいでしょうが、配当投資においては、事業に成長性を備え、かつ比較的安定している連続増配銘柄などを選ぶのが王道です。

秋が旬の関連銘柄が美味しい!

秋はイベントの季節。2023年、投資家も注目の2大イベントとその関連銘柄をご紹介します。

・ラグビーワールドカップ2023フランス

ラグビーワールドカップは4年に一度開催され、今年はフランスで9月8日から10月28日までの2か月にわたって熱い戦いが行われます。

4年前の日本大会では、「ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢な桜の戦士たち)」の愛称をもつ日本代表が快進撃を見せて初のベスト8に進出。英国風パブ「HUB」を展開するハブ<3030>など関連銘柄が盛り上がりました。

(そのときの様子は、ぜひこちらをお読みください → 個別株投資で最もやってはいけないこと 英国風パブで知った愛のほろ苦さ…

そのほかには、日本代表のユニフォームを手がけるゴールドウイン<8111>、代表選手が所属するパナソニックホールディングス<6752>やトヨタ自動車<7203>、オフィシャルサプライヤーである大正製薬<4581>などが挙げられます。

日本の初戦は9月10日のチリ戦。グランド外の熱い戦いにも期待したいところです。

・東京ゲームショウ2023

東京ゲームショウはE3やGAMESCOMと並ぶ世界3大ゲームショウのひとつ。年に一度開催され、コロナ前の2019年には26万人もの来場者を動員するほど、世界的に注目度の高いイベントです。

今年は9月21〜24日に行われます。「ゲームが動く、世界が変わる」をテーマに、4年ぶりに幕張メッセ全館を利用し、オンライン配信やVR(会場)も駆使してのハイブリット開催です。来場予定者は2022年よりも5万人多い20万人が想定されています。

ゲーム会社が新作のゲームを発表したり、ゲームショウ自体がメディアで盛んに取り上げられたりするために、株価も活発に動きます。スクウェア・エニックス<9684>、カプコン<9697>、バンダイナムコ<7832>、コナミグループ<9766>などが出展を予定しています。

じっくり吟味の月とするか、それとも…

9月は、アノマリー的には下落傾向が強いものの、たとえ大きく調整したとしても嘆くことはありません。むしろ、「9月相場は季節的に下がりやすいもの」と知っておくことで、腰を据えて、安くなった銘柄をじっくりと吟味することができるでしょう。

高配当・連続増配銘柄に着目してポートフォリオを充実させるもよし。旬のテーマ株にチャレンジするもよし。

あるいは、次の相場の先導株を探してみるのもいいかもしれません。先導株は、相場全体が下落となる中で最も抵抗を示し、底入れ後は最初に方向転換して、その並外れたパフォーマンスを発揮します。

もちろん、下落相場に無理してまで投資なんかせず、利益を出しやすい月まで待つのもひとつの選択です。相場格言にもあるとおり、「休むも相場」ですから。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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