コロナで高値更新の意外な銘柄 それは買うべきか、買わざるべきか?
梅雨空の下、高値更新する銘柄が続々
株式市場を襲ったコロナショックもひとまずは落ち着きを見せ、日経平均株価は22,000円台を回復しました。まだまだ余談を許さない状況ではありますが、世界的な経済活動再開への期待と、国内でも緊急事態宣言が解除されたことを受けて日本株への買いが続き、さまざまな銘柄が高値を更新しました。
そもそも「高値更新」とは?
まずは「高値更新」についておさらいしておきましょう。
相場解説などで頻繁に使われる高値更新とは、読んで字のごとく、ある期間内の高値を更新したという意味です。ここに「昨年来」「年初来」「上場来」など期間を表す言葉が添えられて、「年初来高値を更新」などと言われます。また、新たについた高値を「新高値」と呼びます。
・「昨年来」「年初来」「上場来」
「昨年来」と「年初来」は性質が似ているのですが、時期によって使い分けられます。「昨年来」は1月から3月までに使われ、対象となる期間は前年の1月からその時点まで。例えば、2020年2月20日時点での「昨年来高値」とは、2019年1月1日以降2020年2月20日までにおける高値となります。
4月以降は「年初来」が使われます。「年初来」はその年の1月1日からその時点までに使われ、例えば2020年6月22日時点で「年初来高値」を更新したという場合なら、その対象期間は2020年1月1日以降ということです。
このように、昨年来、年初来での高値更新は最長約1年弱の期間での高値更新となるので、中期でのトレンドが上向きであることを意味しています。
それに対して、「上場来高値」はその銘柄が株式市場に上場して以来の高値ということになり、上場来高値を更新した場合には、現在の業績や株価が長期的な上昇トレンドにあると見ることができます。
2020年6月に高値更新の意外な銘柄たち
コロナショックを受けて株式市場では「巣ごもり」「リモートワーク」「オンライン授業」「医療」といった需要に関連する銘柄に注目が集まりました。そして、6月に入り相場が息を吹き返したところで、さまざまな銘柄が高値を更新。なかでも「上場来高値」を更新した特徴的な銘柄を見てみましょう。
・キーエンス<6861>
工場の自動化などに使われるセンサーや制御機器を手掛けるキーエンス<6861>。売上高営業利益率は50%を超え、高収益かつ急成長を続ける企業として注目を集めています。
新型コロナウイルスの影響により、年初から他のFA(工場自動化)銘柄とともに株価は低迷していましたが、6月に入ると45,000円を超えて上場来高値を更新。その強さを見せつけています。景気回復への期待や、工場の自動化需要が盛り上がるのとともに、先行きへの期待が高まっています。
高値更新によってキーエンスの時価総額はおよそ11兆円となり、気づけばソフトバンクグループ<9984>や日本電信電話<9432>、ソニー<6758>などを上回り、東証の時価総額ランキングでトヨタ自動車<7203>に次ぐ2位に(6月3日時点)。今の日本株相場を象徴していると言えるでしょう。
また、工場で使われる空気圧機器大手のSMC<6273>や、自動運搬システムのダイフク<6383>なども、同様の理由で上場来高値を更新しています。
・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>
ディスカウントストアの「ドン・キホーテ」や「ユニー」「長崎屋」などを傘下とするパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>。規模の拡大による成長が続いており、前期(2019年6月期)まで営業利益は30期連続で増益となっていました。
2020年は新型コロナウイルスの影響で訪日外国人が激減し、インバウンドによる免税売上高が大きく減少。同社にとって大きな逆風となりました……が、巣ごもりによる買い溜め需要という強力な追い風が吹き、小売り業界の勝ち組として期待の買いが続き、6月に入っても上場来高値の更新が続いています。
・イー・ギャランティ<8771>
売掛債権の保証を手がける保証サービス企業がイー・ギャランティ<8771>です。創業間もないベンチャー企業や中小企業などが新規の取引などを行う際に、保証料を同社に支払うことにより、信用力を補完して商取引を円滑に行うことができます。
同社は独自の計算モデルを用いて債権などのリスク管理を行い、各地の地方銀行とも積極的に連携して取り扱い高を伸ばしながら成長を続けてきました。
そして今、新型コロナウイルスの影響により、企業間取引における信用リスクがこれまでよりも強く意識されるようになったことから、同社の業績に対する成長期待が高まっているです。
株価は、2020年3月にコロナ禍が本格化して以降、上昇トレンドが続き、5月に2,300円の上場来高値を記録。以降は全体相場が強さを見せたこともあり調整色を強めていますが、調整一巡後は高値への再トライも期待できるかもしれません。
高値更新銘柄の見つけ方
上で説明したように、昨年来高値・年初来高値を更新する銘柄は中期的な上昇トレンド、上場来高値を更新した銘柄は長期的な上昇トレンドにある、と推察することができます。現在のように相場の先行きが不透明な状況では、高値更新という点から銘柄を探すことも効率的な方法となります。
その際に活用したいのが株式情報サイトです。もちろん、知っている銘柄をひとつひとつウォッチすることもできますが、東証に上場している銘柄は、マザーズやJASDAQなどの新興市場を合わせるとおよそ3,700銘柄。とても現実的とは言えません。
例えばヤフーファイナンスは、株式ページのランキング項目として年初来高値を設けています(上場来を含む)。また日本経済新聞電子版では、マーケットのページの株式項目に新高値銘柄の一覧を掲載しています。
高値更新の〝出遅れ銘柄〟を狙え
これら高値更新銘柄の情報は、市場の動向を探る重要な手がかりとなります。そこからさらに、「これから高値更新しそうな銘柄」を見つけることもできるかもしれません。
例えば、FA(工場自動化)関連の銘柄が次々と高値を更新しているのであれば、「同じFA関連の〝出遅れ銘柄〟が次に買われるのではないか」と連想できます。そこで関連銘柄を探し、まだ高値更新に至っていない銘柄の目星がついたら一歩踏み込み、「なぜその銘柄が出遅れているのか?」を考えてみます。
例えば、工場で使われるロボットや精密な制御装置を手掛けるFA業界の大手、ファナック<6954>。株価は相場全体につれ高して6月上旬に20,000円を回復したものの、先に挙げたキーエンスなどが上場来高値を更新する中、2018年1月の高値33,450円に比べると出遅れています。
要因としてはさまざまなことが考えられますが、同社の顧客は自動車業界の比率が高いことから、「自動車市況の落ち込みが下押し要因になっているのではないか」という仮説を立てられます。もし自動車市況が今後回復すると考えるなら、ファナックを買いの検討リストに入れることができるでしょう。
あえて高値を掴みにいく
高値更新銘柄への投資は、トレンドに合わせた「順張り」です。特に上場来高値の更新は、それ以上の値で買っている投資家がいないわけですから、売りも出にくいという安心感があるうえ、短期の順張りトレーダーによる買いも期待できるため、思わぬ上昇となることがあります。
しかし、あくまで高値圏での取引となりますので、高値掴みのリスクがあることは常に意識しておいたほうがいいでしょう。今日、上場来高値を更新したからといって、この先も必ず上昇していく根拠にはなりません。特に相場に過熱感が見られる局面では慎重な対応が必要になります。
それでも、高値更新はそれ自体が買い材料となるため、本来すべての投資家にとって魅力的に見えるはずです。しっかりとリスクを管理しながら高値を掴みにいくことができれば、そこには新たな世界への扉が待っているかもしれません。