順張りの成長株か、逆張りの割安株か。一流の投資家が成長株を選ぶ理由とは

朋川雅紀
2022年6月24日 11時30分

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《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

成長株投資と割安株投資

運用を行う上で基本となる考え方や投資手法、いわば「投資スタイル」の代表例として、成長株投資割安株投資があります。成長株はグロース株、割安株はバリュー株とも言われます。

理論的に言えば、将来のEPS(1株あたり利益)あるいはその方向性を予想し、そのEPSに妥当な株価収益率(PER)を掛けることによって、将来の株価(のトレンド)が予想できます。

  • EPS×PER=予想株価

つまり、EPS(の方向性)とPERを正しく予想できれば、株価(のトレンド)も正しく予想できるのです。

このとき、EPSとPERのどちらを注目するかによって、成長株投資と割安株投資に分かれます。EPSに注目するのが成長株投資で、PERに注目するのが割安株投資です。

成長株投資とは

成長株投資では、株価を予想するときに、PERよりむしろEPSに注目します。もしPERが一定とすれば、EPSの成長だけ株価も上昇することになります。

たとえば、株価300円のA株について、翌年の予想EPSが10円(PER30倍)だとします。この会社の長期的なEPSの成長率を20%と仮定すると、1年後の予想株価は360円ということになります。

【例】
現在株価:300円
翌年の予想EPS:10円(PER=30倍)
長期EPSの成長率:20%
 ▼
将来の株価=PER×EPS
     =30×(10×1.2
     =360円(20%の上昇)=1年後の株価

・成長株投資の特徴

成長株投資の特徴は「順張り」である点です。言い換えれば、勢いが加速することが前提になっています。成長株投資の主な投資対象は、ハイテク、ヘルスケア、消費/サービスなどです。

・成長株投資のリスク

 成長株投資における最大のリスクは、将来のEPSが期待ほど高いものではなかったと判明した場合にPERが縮小することです。つまり、PERとEPSがダブルで低下してしまうということです。

割安株投資とは

割安株投資では、株価を予想するときに、EPSよりもPERに注目します。したがって、PERの低い銘柄が買い入れ候補になります。

PERが低い、つまり「人気がない」ことには理由があります。悪材料があるからPERが安くなるのです。もし市場がこの悪材料を必要以上に悪く評価しているとしたら、そこに投資機会が存在します。これが割安株投資の考え方です。

株価120円で、翌年の予想EPSは10円(PER12倍)というB株で考えます。市場はこのB社の長期EPSの成長率を5%と予想しています。

【例】
現在株価:120円
翌年の予想EPS:10円(PER=12倍)
長期EPSの成長率:5%

ところが、市場の予想に反して、翌年以降のEPSは年8%で成長し、その後も失速が予想されないとします。市場は、これまでPERを過小評価していたことになりますので、PERは拡大します。仮に、PERが14倍まで拡大したとすると、次のようになります。

将来の株価=PER×EPS
     =14×(10×1.08)
     =151円(26%の上昇)=1年後の株価

・割安株投資の特徴

割安株投資は「逆張り」です。つまり、悪材料の出尽くしが前提です。割安株投資の主な投資対象は、景気敏感株や公益などです。

・割安株投資のリスク

 割安株投資における最大のリスクは、「安かろう悪かろう」という市場の認識が正しく、PERが低いままであることです。その場合、株価は安いままで放置され続けます。 

成長株投資 vs 割安株投資 

一般的には、成長株投資はハイリスク・ハイリターンと言えますし、反対に、割安株投資はローリスク・ローリターンと言えます。とりわけ、成長株は金利の環境に大きく影響を受ける傾向がありますので、金利上昇時には慎重な対応が求められます。

成長株投資では、成長が持続するかどうかの見極めが必要ですし、割安株投資では、これ以上の悪材料がないかどうかの見極めが重要です。

もちろん、成長株と割安株とどちらのスタイルを重視するかは好みの問題です。そもそも、成長株と割安株を分けることに意味があるのか、と疑問を唱える人もいます。

どちらのスタイルを重視するにせよ、それぞれのスタイルの長所と短所をしっかり理解して使うことが肝要です。

私が成長株投資を選ぶ理由

私自身は、基本的には成長株投資を中心にしています。私が成長株を好きな理由のひとつは、成長株は長期間にわたって投資対象になり得る点です。

割安株は、市場の過小評価の修正が終わってしまうと、そこから先の大きな株価上昇は期待できなくなります。別の銘柄を見つける必要が出てくるかもしれません。加えて、いつ株価修正(上昇)が起きるのかを予測するのは困難です。

ちなみに、私自身のスタイルを厳密に言うと、GARP(Growth at Reasonable Price)というスタイルになります。成長株投資と割安株投資の両方を組み入れ、バリュエーションは成長性を考慮して相対的に判断します。

このスタイルでは、成長性を重視して投資対象を探しますが、実際の投資はバリュエーションを考慮して行いますので、いくら成長率が高くてもバリュエーションが極端に高い銘柄には投資しません。ストーリーにかなりの魅力を感じている場合に限り、投資金額を少なめにして投資するようにしています。

自分が魅力的だと思って目を付けた銘柄のバリュエーション(PER)が拡大していく様子を見ているのはつらいですけれども、限られた時間の中で効率よく銘柄選びを行うためには、ある程度の割り切りも必要です。完璧さを求めると、かえって効率が悪くなります。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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