株で儲けられない人の間違い 「一流の投資家」が絶対にやらないこと
《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》
売買は非日常である
株で儲けられる人は無駄な売買はしません。「ここぞ」というときに売買を行います。私自身も、実際に買いや売りの行動を起こすことはあまり多くはありません。
投資に関わるアクションは、たったの2つだけです。そうです。ひとつは「買い」で、もうひとつは「売り」です。しかしながら、いつも「買い」か「売り」をする必要はなく、「何もしない」という選択肢があってもいいのです。
私はデイトレードはしない主義ですので、投資に関わるアクションという意味では、ほとんどの時間は何もしないことになります。ですから、私にとって売買は「非日常」で、何もしないのが「日常」なのです。
株価が上がっても売らない、という選択肢
株を買うのは、その会社の株価が上昇すると思うからです。これは当然だと思います。例えば、ある企業の株価が700円だとします。もしあなたが何らかの理由で、その株価の適正水準は1,000円だと判断したら、おそらくその株を買うでしょう。
でも、その株価が1,000円だったとしたらどうでしょう? 買いませんよね。買いは見送るはずです。つまり、買いを行うのは、株価が割安な(非常に安い)ときです。私は、この割安の状態を「マーケットが間違っている」と定義しています。
では、700円でその株を買った後、株価が1,000円になったとします。あなたならどうしますか? その株を売りますか?
ほとんどの投資家は「売り」と答えるでしょう。プロの投資家のほとんども「売り」と答えると思います。でも、私は違います。私は売りません。何もしません。株価が適正水準になったからといって、焦って売る必要はないと考えるからです。
私は、株価が適正水準に近い状態を「マーケットが正しい」と定義しています。そして、株価が割安な状態に行くことがあるということは、同じように、株価が割高な水準に行くこともあるということです。
マーケットは下にも上にも間違う
私は仕事柄、非常に多くのプロの投資家と会ってきましたが、「株価が割安な水準で買って、株価が適正水準になったら売る」という行動をいつも不思議に感じていました。なぜなら、この姿勢は「株価は割安と適正の間だけを行き来する」ということを前提としているからです。
そうではなく、「株価は割安になることもあれば、割高になることもある」と考えるのが自然ではないでしょうか。
そこで私は、「マーケットが間違っている」と思われる水準に上がるまで待ちます。もちろん、1,000円で売ることも悪いとは思いません。しかし、1,000円で売るのは「もったいない」と思うのです。
私はマーケットが過熱するまで待ち、極力、それに乗ろうとします。同時に、その後いつ降りるかを絶えず考えています。
ただし、過熱しているときには、バブル(熱狂)を期待して新たな買いを入れるようなことは決してしません。過熱がいつもバブル(熱狂)に変わるわけではないからです。
儲けられない人はしょっちゅう間違う
株で儲けられる人は、マーケットが異常な(間違っている)ときだけ売買をします。マーケットの過熱を利用して、売り場を見つけますし、マーケットの低迷を利用して、買い場を見つけます。
一方、株で儲けられない人は、しょっちゅう売買を繰り返して、大きく儲けられるチャンスを逃してしまいます。さらに、マーケットが過熱しているときに買いを入れて高値つかみをしたり、マーケットが低迷しているときに投げ売りをしてしまいます。
ちなみに、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長(当時)は、1996年12月に、アメリカ株の上昇を「根拠なき熱狂」ではないかと警告しました。しかしその後、アメリカ株は3年以上も上昇を続けました。つまり、バブルだからといってすぐに弾けるとは限らないのです。
時々、他人と違うことをする
株で儲けられる人は、時々、他人と違うことをします。株で儲けられない人は、いつも、他人の後追いをしてしまいます。重要なことなので、詳しく述べたいと思います。
「他人と同じことをやっても株では儲けられない」という話をよく耳にします。確かに、トレード(短期売買)の世界はゼロサム・ゲームで、市場参加者の1割程度だけが儲けられて、残り9割が損をするとも言われていますので、ある意味で正しい表現なのかもしれません。
でも、長期投資の場合は少し違うと思います。長期投資は「プラスサム・ゲーム」ですので、普通にやっていれば参加者全員が儲けることができます。株価がランダム(不規則)に動く短期の相場と違って、株式市場というのは長期では上昇トレンドを描くからです。
「普通にやる」というのは、タイミングを計った売買は行わず、特定の地域、業種、銘柄に偏ることなく、幅広い銘柄を長期間保有することを意味しています。
株式投資の経験があまりない人や銘柄の調査・分析に時間をかけられない人であれば、インデックス・ファンドや市場連動型ETFをグローバルで投資するのがいいでしょう。これを長期で保有して損をするというのは、ほとんど想像できません。
8割は市場に身を任せ、2割だけ動く
投資経験を積んで、もう少し積極的にリターンを取りたい人には、「時々、他人と違うことをする」ことをお勧めします。
「時々」とはいつかと言うと、株式市場は“なだらかな”上昇トレンドを描くという前提で、市場が楽観的になって急上昇したときとか、市場が悲観的になって急低下したときです。要するに、市場が極端に楽観や悲観に傾いたときにだけ売りや買いを行い、それ以外のときはマーケットに身を任せるのです。
人間というのは弱い動物です。市場が楽観的になって急上昇しているときには買ってしまい、市場が悲観的になって急低下しているときには売ってしまいます。結果として、儲けられたはずの水準を下回る利益を手にするか、あるいは損を抱えることになってしまうのです。
プロの投資家でも、一般の投資家もで、常に間違うということはありませんが、市場が極端なほうに向かったときは、間違うことが非常に多くなります。
かなり感覚的ですが、市場参加者は、8割の時間は大きな間違いをしませんが、残り2割で大きな間違いを犯してしまい、結局は儲けられずに終わるのではないでしょうか。この8割の時間、株価はゆるやかに上昇するか横ばいの動きをします。ですから、残りの2割の時間だけ気をつければいいのです。
2割の行動で大きく儲ける
ただ、悲しいかな、投資家というのは、市場が上がれば上がるだけ強気になり、下がれば下がるだけ弱気になってしまうものです。最も冷静にならなければいけないときに感情的になってしまい、2割の時間に他人と同じ行動を取ってしまうのです。
私自身も、この2割の時間に大きな失敗をした経験があります。ITバブルでハイテク株が大きく上昇した後にさらに買い増したことと、ITバブル崩壊から立ち直って株価が底を打った後もリスクを取れず、株価上昇の恩恵を受けることができなかったことです。
しかし、ITバブルおよびその崩壊から学んだ教訓を生かし、リーマンショックや今回の新型コロナウイルスによるパンデミックにおいては、私は2割の時間に他人とは違った行動を取り、うまく儲けることができました。
投資においては、転換点(天と底)を見極められれば、リターンは飛躍的に改善します。天底をピンポイントで当てるのは誰にも不可能ですが、天底に近いポイントというのは、経験によってある程度はわかってくると思います。
長期投資において、時々、他人と違うことをすれば、市場を上回るリターンを獲得できます。
余計な売買をしないで、何もしなくても、市場並みのリターンは手にできます。
しかし、いつも他人の後追いや他人と同じことをしていれば、市場を下回るリターンしか獲得できないのです。