株価が上がるのは何月? 毎月の株式相場の特徴と注意点をチェック
《桜が咲いたらお花見、お盆には帰省して、年末には大掃除……といった季節ごとの「決まり事」が、実は株式相場にもあるってご存じですか? 知らなきゃ損の「傾向と対策」をご紹介します》
投資戦略に経験則を生かす
株式相場ではしばしば経験則やアノマリーが参考にされるときがあります。アノマリーとは、特に理論的な根拠があるわけではないけれど、それなりに当てはまることが多い相場の経験則です。例えば有名なものには「節分天井・彼岸底」や、アメリカでは「セルインメイ」などがあります。
また、毎年定期的に訪れるイベントも市場参加者の間では意識されており、投資戦略をどう組み立てるかという前提条件になります。
個人投資家にとっても、そうした相場の経験則や定期的なイベントを踏まえた月ごとの特徴を知っておけば、先を見据えた戦略を立てたり、事前に対策を打ったりできるようにもなります。
12か月の株式相場の特徴
4月相場の特徴は?
新年度入りとなる4月は、国内の機関投資家などの買いが入りやすいと言われています。
そして、月末から5月のゴールデンウィーク明けにかけて、企業の決算発表が本格化します。日本では3月末を本決算とする企業が多く、この本決算の発表では、前年度の着地と今期の業績予想を開示する企業も多いことから、ガイダンスに注目度が高まります。
アナリストたちによる今期の業績予想も、この時期にはおおよその市場コンセンサスが形成されています。そのため、実際の決算内容によっては「失望売り」や、評価した買いが入って株価の振れ幅が大きくなる場合もあります。
5月相場の特徴は?
ゴールデンウィークは、海外市場が開いているなかで日本市場だけが休場のため、連休明けに大きく相場が動く傾向にあります。また、特に為替市場では、輸出企業などによる取引が行われないことからレートが変動しやすくなります。
有名な相場格言である「セルインメイ(Sell in May and go away=5月に売り逃げろ)」のとおり、株式相場が年初から上昇していた場合、5月の連休明けから売りが入って相場が調整することもあるので、売りのタイミングをうかがう市場参加者が多い月でもあります。
6月相場の特徴は?
6月には米ロサンゼルスで世界最大のゲーム見本市「E3」が開催され、国内外の大手ゲームメーカーが出展することから、しばしば取引材料になります(近年はコロナのためオンライン開催)。
また、6月を含めた3月・6月・9月・12月は第2金曜日は「メジャーSQ」の呼ばれ、株価指数先物の決済日となっています。日経平均株価やTOPIXなどの先物のポジション整理などによる相場の波乱が起こる場合もあるため、押さえておきたいところです。
また、企業の株式総会は6月に集中しています。株式総会の当日に株価が下落していると個人投資家などからの質問のトーンも厳しくなることが多いたため、企業が自社株買いの実施を行う時期も6月が多くなると言われています。
7月相場の特徴は?
株主総会も一巡して下半期入りとなる7月は、「サマーラリー」と呼ばれる手がかり難のシーズンになります。夏ということで、猛暑日が続いた場合はビールや飲料、エアコンなどの猛暑関連銘柄に物色が向かう場合もあります。
8月相場の特徴は?
8月は、外国人投資家がバカンス休暇に入ったりする場合もあり、「夏枯れ」と言われる売買の少ない1か月になる傾向があります。国内でも、甲子園で高校野球大会が行われるほか、お盆休みにもなるため、国内投資家も手控えムードとなる傾向があります。
この時期に投資家の間で話題になることがあるのが、「ジャクソンホール」です。
「ジャクソンホール」とは、毎年8月下旬に米カンザスシティ連邦準備銀行がワイオミング州ジャクソンホールで開催する経済政策のシンポジウムを指します。各国の中央銀行総裁や政治家が集い、金融政策や経済について議論します。
なかでも、米FRB(連邦準備制度理事会)の議長が行う講演の内容は、世界の株式市場に大きな影響を与えるアメリカの金融政策の方向性を知る手掛かりとして、多くの投資家が注視しています。
9月相場の特徴は?
夏休みが明け、機関投資家も年末に向けて再び体制を整える9月。
アメリカの相場格言「セルインメイ」には続きがあります。それは「But remember to come back in September(ただし、9月に戻ってくるのを忘れるな)」というもので、9月には株式相場が底入れして年末に向かって上昇することが多い、というアノマリーなのです。
国内では、3月期決算企業の上半期末を迎えることから、月末の中間配当の権利付き最終日(その日までに株を買えば配当の権利がもらえる日)に向けた権利取りの買いも入る傾向にあります。
また、ゲームの見本市「東京ゲームショー」が開催されることから、6月の「E3」同様に、ゲーム関連銘柄が物色されやすい時期でもあります。
10月相場の特徴は?
10月は、下旬から3月期決算企業の上半期(4〜9月)の決算発表シーズンとなります。期初の見通しを保守的に出すことが多い企業も、事業環境が好調な場合は、このあたりで通期見通しの上方修正を出すケースが多く、注目です。
11月相場の特徴は?
国内では定例のイベントなどが特にない11月ですが、アメリカでは早くも年末商戦がスタートし、消費関連銘柄が盛り上がりを見せます。11月第4木曜日の翌日は「ブラックフライデー」と呼ばれ、アマゾンなどEC業者も含めて大々的なセールを行い、一年で最も売上が見込める日となります。
またアメリカでは2年ごとに、大統領選挙と上下両院議員が改選(上院は3分の1ずつ)となる中間選挙が交互に実施されます。2016年のトランプ氏当選時に相場が大きく乱高下した記憶が甦ってくる方も多いのではないでょうか(2022年は中間選挙が予定されています)。
12月相場の特徴は?
一年の終わりとなる12月の有名な相場格言に「掉尾の一振(とうびのいっしん)」があります。捕らえられた魚が尾を大きく振る様になぞらえて、年末に株式相場が上がるケースが多いという経験則を言い表したものです。
近年では、多くの企業のIPO(新規株式公開)が集中するケースも多く、マザーズ市場などは投資資金捻出のための換金売りが上値を抑える場面も、しばしば見られました。今年は、東証再編によるIPOへの影響にも注視したいところです(新興市場はグロース市場に)。
ただ、中旬を過ぎた頃から年末にかけては、利益の出ている海外の投資家などが早々にポジションを手仕舞って休暇に入るケースも多く、売買が細りやすい時期でもあります。大型株の売買が停滞し、小型株に物色が向かいやすくなるため、年末から年始に向けては新興株への関心が高まります。
ちなみに、新年相場への期待を込めた有名な格言が「株を枕に年を越せ」です。
1月相場の特徴は?
新たな年になって新たな資金が入ってくると言われるように、新年相場として買われやすいアノマリーがあります。その一方で、長期休暇となる場合もあることから、年末高であっても大幅下落で始まるケースもあり、近年では1月で相場の雰囲気が大きく変わることも多々あります。
アメリカでは、最新の電子機器の世界見本市である「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」が毎年ネバダ州ラスベガスで開催されます。2022年のCESでは、ソニーグループ<6758>がEV(電気自動車)事業への参入を発表して話題となりました。
2月相場の特徴は?
1月末から2月初頭にかけては中国の「春節」(旧暦の正月)となり、上海や深圳などの中国の本土市場だけでなく、香港や台湾、ベトナムなどアジア市場が軒並み休場となります。そのため、春節明けのアジア株相場が大きく変動し、日本株市場に思わぬ心理的な影響を与える場合もあります。
中旬からは、3月期決算企業の10〜12月期(第3四半期)の決算発表シーズンとなります。このあたりからアナリストの目線も来期に移っていき、企業側の見通しなどにもより注目が集まりやすくなります。
3月相場の特徴は?
本決算の企業が多い3月は、月末にかけては権利取りの動きが見られ、好配当や株主優待の魅力的な企業に注目が集まりやすくなります。
株式市場の傾向と対策
株式市場の年間のおおよそのスケジュールと、それぞれの特徴を点検しました。
ここで紹介したアノマリーや経験則は、当然のことながら毎年必ず当てはまるものではありません。しかし、例えば「配当権利月に向けて高配当銘柄を先回り買いする」「IPOラッシュ前に小型株を早めに利益確定しておく」など、相場の「先の先」を考えるうえで非常に有効な情報です。
アノマリーや定例イベントは他にもいろいろとあり、それを知らないばかりに、せっかくのチャンスを逃したり、しなくもいい損失を出していたかもしれません。相場には特徴やパターンがあることを理解して、これからの投資に役立ててください。