ZOZO、日産、ソフトバンクG… 2019年、投資家に教訓を与えた銘柄たち
2019年も実に多くの銘柄が株式市場をにぎわせてくれました。そこで「かぶまど」執筆陣に、「2019年いちばん私をアツくさせた銘柄」についてアンケートを実施。それぞれの思いとともに株価を振り返ります。良くも悪くも、投資家たちに「教訓」を残した銘柄とは──
衝撃と反省の「ZOZO」
・岡田禎子(ファイナンシャル・プランナー)
2019年最も気になった銘柄といえば、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZO<3092>。9月12日にヤフー<4689>がZOZOに対するTOB(株式公開買い付け)を始めることを発表したのは、まさに「衝撃」のひと言でした。
ZOZOは毎回、決算説明会のライブ配信をリアルタイムで観ていたのですが、2018年3月期の「10年以内に時価総額5兆円を目指す」というコミットメント、2019年3月期の「本業に集中してまいります」発言など、経営に強い意気込みを語っていた創業者の前澤友作氏に期待していました。
それだけに、ヤフーによる買収発表の場で宇宙への想いを語る同氏の姿を見て、ショックというか……起業家気質の強い社長の銘柄は将来の見極めが難しいなと痛感しました。同じ思いの個人投資家は多かったのではないでしょうか。
ただ、そうは言っても、2018年には、前澤氏からの自社株買いによる自己資本比率の低下や資金繰りの悪化、銀行への担保差し入れなど、こうなる予兆がなかったとは言えず、大いに反省もしました。
(Chart by TradingView)
悲しき「日産」の惨状
・山本 勧(ファイナンシャル・プランナー)
11月に発表された日産自動車<7201>の中間決算は、営業利益は前年同期比70.4%減、当期純利益は同54.8%減。電気自動車に早くから注目していたにもかかわらず、この状態です。とても残念ではありますが、自動車業界そのものが苦しい状況にあるので、ある程度は仕方ないと思える側面もあります。
しかし、ここまでガバナンスがひどいと、今後復活するのかとても疑問ではあります。7月の第1四半期決算発表を前に、その内容がメディアに漏洩するというゆゆしき事態もおこりました。内部にこうした懸念材料を抱える企業に、機関投資家が積極的に投資するとは思えません。
また、2019年3月の配当利回りは6.28%でした。営業利益は2017年3月期の7422億円から、2019年3月期は3182億円と半減したにもかかわらず高配当を続けています。もちろん今後は減配が予想されますが、株主への配当を控えたとしても、業績が本当に回復するのか……今後も注目していきたいです。
(Chart by TradingView)
チャートに釘付け「ソフトバンクG」
・山本将弘(ライター)
2019年の銘柄をひとつ挙げるとすれば、私の場合、それはソフトバンクグループ<9984>です。
WeWorkの件が世間をにぎわし始める少し前、そのサービスに関する原稿を書いたばかりでした。そのときにはWeWorkについても全く知識がなく、「こういうサービスが増えていくのかなぁ」程度にして感じていませんでした(補足:WeWorkは世界30カ国でシェアオフィスを展開する米ベンチャー企業)。
ところが9月になって、共同創業者のCEOが解任され、不正会計などが報道された結果、すでに申請していたIPOを撤回。そうしたニュースの中でようやく、ソフトバンクGが大株主であることを知ったのです。
株価チャートを見たところ、見事に、教科書に出てくるような下値支持線の割り方をしていて、「なるほど」と感心したのを覚えています。その後は上値抵抗線へと変わり、いまだその打破には至っていません。株価がお手本のような動きをしたことが、個人的にとても参考になった一件でした。
(Chart by TradingView)
気になる「セブン&アイ」の向かう先
・コガマリコ(主婦)
革新的な取り組みが多く、経営のお手本として引き合いに出されることも多いセブン&アイ・ホールディングス<3382>。しかし2019年は、24時間営業に対するコンビニ加盟店の反発や、スマホ決済「7pay」の不正利用による撤退、本部による無断発注など、いろいろな問題がニュースになりました。
株価は2月からから徐々に株価が下がり、4月に安値更新。その後は、10月の中間決算発表で業績が好調だったこと(営業利益・純利益ともに過去最高)、大規模なリストラや不採算店舗の閉店・売り場縮小などが公表されたこともあって、上昇傾向です。
11月からは数店舗で深夜休業が始まり、今後全国的に広まるのかどうか。また、そうした経営方針のバランスが株価にどう影響するのかどうか。生活に身近な存在だけに気になっています。
(Chart by TradingView)
「日本電産」に期待を乗せて
・佐々木達也(元・証券アナリスト)
自動車の電動化・IoT社会を迎える中で、キーパーツであるモーターのメガサプライヤーとして、日本電産<6594>には以前から注目していました。
1月の決算発表会見で永守重信会長の語った「(中国などの現在の)変化は尋常ではない」という発言には市場が動揺しました。中国を中心とした景気動向と市場心理を反映した株としても注目しています。
年の前半は、米中貿易摩擦への懸念が前年から織り込まれていたこと、春先までは中国政府の景気対策などに期待感がある中で、株価も上昇基調が続きました。夏にかけては、アメリカの利下げ期待や中国の景気鈍化継続などもあり、横ばいの動きに。
しかし、秋にかけては在庫調整の進展や車載モーターの受注増加を背景に強含み。10月の中間決算では投資の増加を主因に通期下方修正を発表しましたが、先行きの期待から買われ、株価は年初来高値圏での推移となっています。
足元で期待されている世界最気の回復や自動車の電動化の本格化といった材料もあり、今後は売上の拡大を織り込みながら高値更新していくのでは、と期待しています。