6月の株価はどうなる? 梅雨時のアノマリーで上がる株と、IPO市場の超新星

岡田禎子
2024年6月3日 8時00分

《6月といえば梅雨、7月は七夕、8月は花火大会……と、月によって誰もが思い浮かべる共通のイメージがあるように、実は、株式投資にも「◎月といえば▲▲▲株」といったお決まりの銘柄があります。では、6月に恒例の上昇しやすい銘柄とは?【今月の株価はどうなる?2024】》

6月に上昇しやすい銘柄とは?

6月は、アメリカ株が夏に向けて調整色が強まるのに対して、日本株が優位な展開となりやすい時期です。

3月期決算企業の決算発表が出揃って買いが優勢になることに加えて、月末にかけては配当金の支払い本格化によって再投資効果が期待されること、株主総会シーズンや中間期末を控えて株価意識が高まることなどで、株価が上昇しやすい傾向にあるのです。

そんな6月相場で株価が上昇しやすいのは、どのような銘柄でしょうか? 過去10年で、6月の勝率が高かった主な銘柄を調べてみました。6勝4敗という成績だった日経平均株価よりも好成績を残した銘柄の顔ぶれを見ると、小売、食品、衣料、化粧品などが並んでいます。

6月特有のアノマリーで上がる株

直近10年で驚きの10連勝を記録しているのは、トランザクション<7818>です。同社はデザイン雑貨などを企画・製造・販売する会社で、販促用雑貨の受注生産も行っています。前月比の騰落率は、2021年が+10.4%、2022年が+2.19%、2023年が+13.89%と、いずれも好成績となっています。

この株価上昇のポイントは2つ、6月特有の季節性7月の第3四半期の決算発表が挙げられます。例年6月は、小売や食料品といったディフェンシブセクターが上昇しやすいという季節性があります。さらにトランザクションは、7月に第3四半期の決算発表が行われます。

内需系銘柄の場合、積極的なIRがなければ株価材料に乏しいため、決算発表で株価が大きく動くケースが多々あるのです。同社の場合、2ケタ成長を伴う連続最高益更新中の成長株でもあり、決算発表でのサプライズを期待して株価が上昇しやすい、と考えられます。

トランザクションは、こうした「決算アノマリー銘柄」の顔も持つがゆえに、6月の勝率がダントツに高くなっているといえそうです。

猛暑関連銘柄に注目

そのほかにランクインした銘柄は、6月特有の季節性に加えて、猛暑関連銘柄としての顔もあるようです。

明治ホールディングス<2269>や日清食品ホールディングス<2897>、キーコーヒー<2594>、東洋製罐グループホールディングス<5901>は飲料・アイスクリーム関連など、ZOZO<3092>は夏物衣料、資生堂<4911>も日焼け止めの利益貢献が大きく、猛暑になればなるほど数量効果がグッと業績を押し上げます。

2024年の夏も猛暑が予想されています。梅雨が長く続き、梅雨明け後は太平洋高気圧の勢力が南海上を中心に強まりやすく、ここ10年の暑さを上回って昨年(2023年)に匹敵するような猛暑になる可能性があり残暑も厳しい、とされています。

その暑さを想像するとゾッとしますが、「麦わら帽子は冬に買え」という相場格言があるように、猛暑関連銘柄は実際に暑くなってから買っても手遅れです。今のうちから夏に向けてストックしておきましょう。

株主総会シーズン本格化で動く銘柄

6月は株主総会が本格化するシーズンです。「総会に向けて◯◯社に株主提案がなされた」など、アクティビスト(物言う株主)絡みのニュースが次々と伝わり、株価感応度も一気に高まります。

例えば2023年は、穏健派で知られるイギリスのアクティビスト、シルチェスター社が大手ゼネコンの大林組<1802>に特別配当を求める株主提案を行い、否決こそされたものの、この提案によって3年ぶりの高値をつけました。

シルチェスター社は6月の勝率が良い大成建設<1801>をはじめ、清水建設<1803>や戸田建設<1860>といった国内ゼネコンの株式を大量に所有しています。

こうしたアクティビストの主な目的は、企業価値の最大化です。特に増配や自社株買いをはじめとする株主還元策の強化や経営改善といった株主提案は、株価にはプラス材料となります。

近年は、東京証券取引所による経営改革要請なども後押しとなって、株主提案は増加傾向にあります。2023年の6月総会では90社に株主提案が対して行われ、提案数は344と過去最多を更新しました。

《参考記事》噂の「アクティビスト」の実態 企業に圧力をかける「物言う株主」の存在意義とは

今年は株主提案がさらに増える?

今年は日本に参入するアクティビストが増えていることから、昨年以上に増加すると予想されています。

現時点で注目度の高い提案といえば、香港の投資ファンド、オアシスマネジメントが熊谷組<1861>に対し、2024年3月期の年間配当について会社側提示の130円から160円への増配を求めています。

また、イギリスの投資ファンド、パリサーキャピタルは京成電鉄<9099>に対して、同社が保有するオリエンタルランド<4661>の持分比率の削減などを求めています。

ストラテジックキャピタルも淀川製鋼所<5451>や文化シャッター<5930>、大阪製鐵<5449>などに株主提案を行っています。同社はホームページに株主提案を行った企業を開示していますので、興味のある方はぜひのぞいてみてください。

アクティビストの介入は企業の経営や業界に大きな影響を与え、企業価値(=株価)の向上を促します。株主提案に対して会社側がどのような対応をするのか? 賛成率の伸び(企業への圧力になる)にも注目したいところです。

IPO市場に話題の超新星、現る

今、投資家の間で話題沸騰中のIPOといえば、こちら──宇宙ゴミ対策技術のパイオニアで、日本発の宇宙ベンチャーであるアストロスケールホールディングス<186A>が、いよいよ6月5日に上場します。

スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去や人工衛星の寿命延長、点検・観測などの軌道上サービス事業を行っている企業です。

宇宙関連事業は、近年のIPOで最も人気のあるテーマです。2024年4月に新規上場した宇宙ベンチャー第1号IPOのispace<9348>は、公募価格254円に対して3.9倍となる1000円の初値をつけ、その後につけた上場来高値2373円は公募価格の9.3倍となりました。

2023年12月上場のQPS研究所<5595>は、公募価格380円に対して初値は860円(2.2倍)、その後の上場来高値が4975円(12.7倍)となり、テンバガーとなったのも記憶に新しいところです。

アストロスケールはさらに「スペースデブリ除去の世界初の民間企業」というピカピカの話題性もあり、3匹目のドジョウを狙った投資家の期待値も高い! というわけです。

ただ業績を見てみると、売上こそ伸びてはいるものの毎年50億円近くの赤字を計上していることや、想定時価総額が約800億円と大きいこと、主幹事証券(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)の力量への不安など、厳しい見方もあります。

とはいえ、宇宙は人工衛星やロケットの残骸だらけで、人工衛星に衝突すれば重要な社会インフラの途絶にも繋がりかねない、という深刻な状況となっています。新たな宇宙ゴミの発生を抑制しようと各国政府が規制強化に乗り出している背景もあり、有望な市場であることは間違いありません。

宇宙のロマンを感じさせる新規銘柄ではありますが、ロマンだけで手を出すと火傷を負いがちなのもIPOです。一旦冷静になって、実態をよく確認した上で、セカンダリー投資に参戦するくらいでもいいかもしれません。

《参考記事》IPOに当選しなくても大丈夫。セカンダリー投資ならチャンスは何度でもやってくる

6月の日本株はどう動く?

個別株に投資するには、相場全体の流れもしっかり掴んでおきましょう。

過去の相場から、6月の日本株は初旬から中旬にかけては堅調に推移するものの、中旬で一旦軟調に転じ、その後、月末にかけては回復基調になっています。

この背景には、6月のスタートは決算発表明けで小康状態となりやすく、メジャーSQ(今年は14日)を過ぎたあたりから月末にかけては配当金の再投資効果などが期待できるために上昇となりやすい、という傾向があるためです。

《参考記事》「メジャーSQ」で株価が上昇? 現物株への影響も理解する

このように6月は、日本株には何かと優位な展開になりやすい傾向はあるものの、実はここ数年は、米FRBの金融政策に左右されて株価的にも上下の振り幅が大きい展開となっています。今年もFOMCが11日・12日に、日銀の金融政策決定会合が13日・14日に開かれます。

4月の米CPI(消費者物価指数)の結果を受けて、市場では、アメリカで年内に利下げが行われる、という観測が再び台頭しています。一方の日銀は、6月の会合で、長期国債の買い入れの一段の減額を決めるのでは、との観測が出ています。

どちらも株式や為替に多大な影響を与えるために、注視が必要です。

6月相場は〝最後〟の稼ぎ時

6月に株価が上昇しやすい株をさまざまご紹介してきましたが、「恒例」だからといって、今年も「必ず」上がるとは限りません。もちろん、日本株が優位の6月相場に投資するからには市場パフォーマンスを上回ることが大切であり、実際、6月に強い銘柄はあります。

夏枯れ相場に入る前の最後の稼ぎ時ともいえる6月相場。過去のアノマリーまで目配りして、梅雨の訪れとともに上昇する銘柄をしっかり掴みましょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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