やはり強かった半導体株と、ついに目覚めた鉄鋼株。2023年の株式市場を牽引した銘柄たち
《日経平均株価が33年ぶりの高値を更新した2023年の株式市場。具体的に、どんな銘柄が注目を集めたのでしょうか。かぶまど執筆陣が2023年相場で気になった銘柄を振り返ります》
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日本株を牽引した半導体株
・信越化学工業<4063>
2023年後半の日本株の相場上昇の牽引役の一つは半導体株でした。
中盤はアメリカの金利上昇を受け、半導体などの成長株(グロース株)は調整局面となりました。しかし、生成AI(人工知能)ブームで米エヌビディアやレーザーテックなどの相場が活気づき、年末にかけては金利低下の影響もあり、半導体株への買いの勢いが強まりました。
特に特徴的な動きを見せたのが、総合化学大手の信越化学工業<4063>です。半導体の材料となるシリコンウエハーで世界シェアトップを誇ります。また、半導体の回路を光で焼き付けるための感光剤のフォトレジストなど、半導体製造に欠かせない材料を取り扱っています。
半導体株への買いも相まって、信越化学工業の株価は、9月末の安値2,837円から12月22日の5798円まで、わずか3か月で2倍まで値上がりし、上場来高値圏で推移しています。
中小型株ならいざ知らず、時価総額が11兆円の大型好業績株としては珍しい値上がり率です。2022年末からで見れば約8割も値上がりしており、海外投資家など大きな資金が入っていることをうかがわせる値動きとなっています。
(選・佐々木達也)
・野村マイクロ・サイエンス<6254>
同じく半導体株で、2023年になって株価上昇が目立ってきたのが、野村マイクロ・サイエンス<6254>。純度の高い超純水の製造装置を手がけています。半導体や電子部品などの精密加工では、わずかなホコリやチリが品質に大きな影響を与えるため、洗浄するための水も超純水が必要となるのです。
台湾の半導体受託製造大手・TSMCなどによる新工場の建設が熊本で進められているほか、円安により半導体などの工場を国内に新設する動きが強まっています。熊本は、アジアにも近い立地のほか、きれいな水を確保できることも工場新設の理由として挙げられています。
野村マイクロ・サイエンスの株価は10月以降に騰勢を強め、足元では14,000円を超えて、上場来高値圏で推移しています。また、同じく水処理装置のオルガノ<6368>も上場来高値となっており、どちらも投資家の強い買い意欲がチャート形状に現れています。
(選・佐々木達也)
眠りから目覚めた鉄鋼株
・神戸製鋼所<5406>
チャートだけを見ると「まるでグロース株?」と言いたくなるような、圧倒的なパフォーマンスを見せた神戸製鋼所<5406>。
「産業のコメ」といわれる鉄は、コロナ不況からの回復の恩恵を真っ先に受けた業界だけあって、2022年末あたりから鋼材価格の上昇で利益率が高まっていました。
忘れ去られていた“循環株”(景気や金利、季節、市況など特定のサイクルに応じた影響を受けやすい銘柄のこと)である神戸製鋼所の株価が動意したのは、2023年2月の上方修正を出したあたりから。そこからの快進撃は目を見張るものがありました。
大きな理由としては、鋼材価格の値上げの浸透によるマージンが大幅に改善したことのほか、東証からの改善要請によって「低PBR銘柄」の汚名返上に向けた期待が高まったことも追い風となりました。
業界の中でも特に神戸製鋼所の株価上昇が大きかったのは、ライバルである日本製鉄<5401>やJFEホールディングス<5411>に遅れをとっていた鋼材の値上げが急速に進んだことで、業績改善が追いついたからです。
銀行株もそうですが、しばらく放置されていた銘柄が「旬な銘柄」となった際には、余計な先入観は捨てて美味しくいただくことに専念するべし! そう思わせてくれた銘柄でした。
(選・岡田禎子)