NISAの目的とは? そこには日本政府が考える重要な鍵がある。

かぶまど編集部
2016年1月27日 17時29分

貯蓄から投資へ〜NISAの目的を考える〜

日本では2003年1月から2013年12月まで株式投資の利益に対する税金の減税を行ってきた。具体的には利益に対する20%が税金の対象であったが、10%への減税が継続して行われてきた。しかしながら、2014年1月より本減税制度がNISAへと切り替わった格好となる。

日本政府の目的は日本国民の貯蓄額が他国と比べて突出して多いため、この資産を投資に向かわせることによる経済の活性化やアベノミクスによる株高の恩恵を多くの国民に享受させるべく行った政策である。「貯蓄から投資へ」という明確なコンセプトを掲げている。

日米の家計における資産内容を比較してみよう

日米欧を比較した日本銀行の資料を見てみよう(出典:2015年12月22日資料:https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf)。

asset_structure

日本は「現金・預金」が52.7% 「株式・出資金」が9.7%。それに対して米国は「現金・預金」が13.7% 「株式・出資金」が33.8%。

この数値を見て、米国は素晴らしいと言いたいわけではない。ただ、国民がこれだけ(自分の資産のうち33%以上、投資信託も合わせれば45%以上も)投資資産に充てられているのであれば政府としても無視できない規模なわけだ。

つまり、米国民が保有している米国株の株価を上昇させることで国民の懐があたたかくなり、財布のひもが緩んで消費に向かう。米国のGDPの約70%は個人消費である。

結果、米国経済が活性化し、景気が良くなるのだ。その業績を受けて更に株価が上昇する。この好循環があるからこそ、米国株はこの30年上昇し続けてきているのだ。

そしてその実績があるからこそ、米国民は自分自身の資産の内、約45%を投資に向けているという見方もできる。それが今まで成功してきたからだ。

dow-Jones average

日本はどうなるのか?

まずは2014年からの株価推移を見てみよう。

nikkei_average

2014年1月の始値は「16,147.54」。2015年12月の終値は「19033.71」。つまり、上昇していることにはなる。

更に日本政府は我々の年金までも活用し、株価の上昇を図っている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用構成比率の変更がまさにそのものである。GPIFとは日本の公的年金のうち、厚生年金と国民年金の積立金を管理する法人であり、約130兆円を運用する世界第二位の機関投資家である。

【構成割合の目標値】

  • 国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%

(出典;http://www.gpif.go.jp/gpif/portfolio.html

public_pension
つまり、日本政府はこのNISA制度を日本国民全てに活用してもらうべく、株式市場の下支えひいては経済の活性化を達成するべくまさになりふり構わず対応しているのが現状である。我々の将来の年金までもが投資原資となっており、まさに全てを投資して日本株の上昇を目指しているのである。

NISA制度から見る日本政府の目的

一つの考え方としてだが、日本のNISAは経済対策では賄いきれない「雇用の創出」や「賃金の上昇」を株式市場の上昇によってカバーしてもらうために多くの国民に「貯蓄から投資へ」のシフトを促しているのではないかと思う。

皆さんはNISAについてどうお考えだろうか? 日本政府の目的を理解することによってその使い方も見えてくるかもしれない。

【おすすめ】イキナリ大きな損失を出さないために絶対知っておくべき5つのポイント

[執筆者]かぶまど編集部
かぶまど編集部
無防備なまま株式市場に参加して大切なお金をなくしてしまう人をひとりでも減らしたい──そんな思いから、未来の株価や相場を予測するのではなく、過去の事例やデータといった「普遍的な事実」に焦点を当てた記事を発信します。同時に、株初心者の方や、これから株を本気で始めようとしている方にもわかりやすい解説を心がけています。
最新記事
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格など投資の最終決定は、ご自身のご判断で行っていただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証するものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等にはお答えいたしかねますので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。また、本コンテンツの記載内容は予告なく変更することがあります。
お知らせ
» NTTドコモのマネーポータルサイト「dメニューマネー」に記事を提供しています。
dメニューマネー
» 国際的ニュース週刊誌「Newsweek(ニューズウィーク)」日本版ウェブサイトに記事を提供しています。
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
» ニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」に配信中。「経済」「マネー」「株・投資」ジャンルから、かぶまどをチェック!
SmartNews(スマートニュース)
美しい桜並木通りを小さな戦車がゆく
満開の桜とかわいいメジロのイラスト
銘柄選びの教科書
トヨタを買って大丈夫?