今こそ考えたい「リスクを取る」ことの本当の意味 一流の投資家が明かす「勝者と敗者を分けるもの」

朋川雅紀
2022年10月14日 14時00分

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リスクを取るということ

「リスクを取るか、安心を取るか」と聞かれたら、大半の人は「安心を取る」と答えるでしょう。それが当然だと思われるでしょうが、こと投資の世界においては、これが足かせとなることがあります。

私たちは幼いころから、自分のまわりの世界を認識し、その世界に順応して生きるために、いくつかの「常識」を身につけてきました。ところが、この常識によって、自分たちの行動をある一定の枠にはめ込み、イマジネーションやエネルギーが奪われる側面があります。

自分の理想に近づくためには創造的にリスクを取ることが欠かせません。そうわかっていながら最初の一歩が踏み出せないのは、常識が邪魔するためです。投資家が、具体的な利益目標を定めて積極的に行動するのを躊躇したり、市場が与えてくれるものを当てにしたりするのも、同じ理由によるものです。

投資とリスク

投資は、一定の資金を投じて一定の成果を得る可能性に賭けてみたい、という思惑があって初めて成立します。投資でどの程度成功するかは、どの程度の不確実性なら受け入れられるか、どの程度のリスクだったら管理できるか、といった要素で決まってきます。

特に、不確実性やランダムな市場の動きに対処するうえで最も優れた方法のひとつは、将来を見据えたゴールを設定し、それに沿った戦略を策定することです。投資家は、一度戦略を決めたならば、全力でこれを実行し、ゴールに邁進しなければなりません。

計画通りに事を進められれば、リスクそのものをより扱いやすくすることも可能になるかもしれません。

リスクを取ることは、「恐怖心が生み出す悪循環に陥らずに行動する」ことを意味します。すでに設定したゴールを目指して取引を行い、無意識のうちに生じる自己嫌悪に惑わされることなく、あらかじめ立てておいた計画に沿って行動するのです。

したがって、リスク管理とは、「心を落ち着かせて自然体で取引に取り組む」ことに他なりません。

利益を得るためには、何かをリスクにさらす必要があります。そうしなければ利益を得られません。そうかと言って、過大なリスクをやみくもに取れば、大変なことになります。株式取引であれば、必要なデータを入手し、購入銘柄のファンダメンタルズや市場の特徴などを理解しておかなければなりません。 

利益の最大化に必要なもの

市場というものは不確実でランダムに動くため、投資家は何らかの方法によって自らのリスク管理能力を発揮し、利益の最大化を図らなければなりません。

そのためには、引き受けるリスクの量をある一定水準以下に抑えなければなりませんが、その量は投資家本人のリスク許容度とボラティリティ管理の巧拙によって決まります。問題が発生するのは、リスクに対する投資家の姿勢と、実際に引き受けるリスクの量がかみ合わないときです。 

リスクを取る能力を高める

投資で成功するためには、資金をリスクにさらしても問題ないと確信するだけの根拠と、取引の前提条件を詳細に語る力が欠かせません。なぜこれだけの資金を投じていいのか、その理由を説明できなければなりません。

そのためには、まず今のリスクの取り方のどこに問題があるのか、何が邪魔しているのかを把握する必要があります。

適切なリスクを取る

リスク回避の傾向が特に強い投資家は、ポジションを大きくしたり、ポジションを長期間保有したりすることができません。そのために、目標としていた利益水準に到達できないのです。

一方、あまりにリスクに無頓着な投資家は、リスクを過大に取り過ぎ、負けを取り戻そうとして負のスパイラルに陥り、投資資金の大半を失いかけません。

投資家は、具体的な目標達成に必要なリスクの適正水準を正確に把握しなければなりません。そのためには、十分な実践経験を積むこと、投資対象企業のファンダメンタルズを十分理解すること、自分の心理が投資に与える影響を考慮し、これのコントロールに努めること、などが肝要になってきます。 

大きなリスクを取る方法

投資家が抱える問題は多種多様です。ポジションを長期間保有できない投資家もいれば、株価が上がっても下がってもほとんど影響を及ぼさないほど小さなポジションしか持てない投資家もいます。

もちろん、ポジションのサイズは必ずいつも大きくしなければならないものではありませんが、ここぞというチャンスの場面でリスク水準を引き上げられなければ、十分な利益を得られないのは事実です。

サッカーの得点シーンを思い浮かべていただければ理解しやすいでしょう。得点チャンスが訪れたときには、ディフェンス陣も攻撃に参加するなどリスクを取って数的優位を作り、得点を取ろうとします。それと同じことです。

投資を始めて間もない初心者の多くは、保有する株式が値下がりするかもしれないという恐怖にとらわれやすく、あまりに早く仕舞ってしまうために、小さな利益しか上げられずにいます。これを克服するためには、大きなポジションを長期間保有できる力を身につけなければなりません。

たとえば、含み益が出たら一部を売却してある程度の利益を確定し、その後、株価が下落したところで買い増しし、上昇トレンドが続く限り保有するように心がけてみてはいかがでしょうか。

勝者と敗者を分けるもの

市場の変化に柔軟に適応して上手に利益を得るためには、投資の手法を自分なりに調整する必要があります。投資で利益を得る方法はひとつではありませんが、その際に重要なのは「すでに行っている自分のやり方を踏襲したもの」であることです。

勝者と敗者を決めるのは、不確実性から生まれるストレスや感情的な反応に直面しても、適度なリスクを取り続けることができるかどうかです。リスクを取って成功するには、市場が与えてくれるものを待つのではなく、具体的な成果をイメージしてその実現に取り組む必要があります。

[執筆者]朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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