株初心者「七つの大罪」 株式投資で決してやってはいけない期待・安心・確信…

朋川雅紀
2023年3月15日 12時00分

InsideCreativeHouse / Adobe Stock

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

投資家が犯しやすい過ち

投資家が犯しやすい過ちにはどういうものがあるでしょうか。特に、株式投資を始めてまだ間もないない人は必見です。

・大きく儲けたいという欲望

大きく、そして早く儲けたいという欲望は、「株式初心者の代名詞」のようなものです。株式投資に関わる辞書から「願望」や「期待」という文字を削除しなければなりません。

株式取引が何かをもたらしてくれるという願望や期待を持つことは、「ギャンブル」以外の何ものでもありません。

願望や期待はそもそも人々をマーケットに惹き付けるものですが、願望や期待を持ってマーケットに向かっても、それらはマーケットでの成功ということに関しては、ほとんど役に立ちません。と言うより、邪魔になるだけです。

・確実を求める

「確実」を探し求める行為は失望やフラストレーションを招く無駄な努力です。株式市場において、確実を得られることはあり得ません。確実ではなく、「高い確率」を模索すべきです。

ある取引を行って利益が出たとしても、それは取引が健全であることの証しにはなりません。反対に、投資手法には何ら問題がなくても結果が損失ということは十分あり得ることです。

・勝ち続けられると思う

マーケットが平均的な人々に長期間にわたって報酬をもたらすことはめったにありません。株式市場には、株価が底を打って切り返す前に弱者を振り落とすという固有の傾向があるからです。金融市場は大多数に利益を与えるようにはできていません。

初心者が買いたい時はプロが売りたい時です。初心者がもうダメだと思って売りに回る時、プロは初心者から積極的に買って、初心者の苦しみを和らげてあげます。

・快適さを望む

心理的に心地のよい意思決定は、ほとんどの場合、間違っています。それは、リスクを見落としているか、あるいはリスクに寛容になっているからです。

ある特定の戦略やアプローチが、心理的・感情的に受け入れ難いものであれば、それが正しい取引である確率は極めて高くなります。私の経験上、買うのが怖いと感じた時は、その買いがお宝ポジションになることが多いです。

大多数が恐れをなして踏み込まないところにチャンスが潜んでいます。富は、未知の影を捕らえる者に用意されていますし、人が歩いたことのない道に隠されています。空に雲一つない青空の場合は警戒しなければなりません。

マーケットに対して安心感を求めてはなりません。心理的な弊害の中でも最大のものは引き金を引くことに対する恐怖です。より多くを知ろうとせずに知的に行動できる者のところにお金は集まるのです。

マーケットでは、株価はファンダメンタルズに先行する傾向があり、大幅な上昇はファンダメンタルズの改善が明らかになる前に始まってしまう傾向があります。

・利益を優先する

1つ1つの選択なり決定なりを正しく行うことに集中すれば、結果はおのずとついてくるものです。

マーケットの成功者たちは、多くの時間を自らの投資スキルを磨くこと、戦略の練り直し、新しい手法の開発などに費やしています。一般の投資家は、結果ばかり求めて、投資スキルの習得には熱心ではありません。

常に、投資家としての成長を最も優先すべきです。向上心を利益に対する欲望に優先させなければなりません。一時的に利益を犠牲にしてでも、投資スキルを追求することによって、投資家は将来これまで以上の利益を手にすることができるでしょう。

・誰か(他人)のせいにする

マーケットに文句を言ったり、専門家を恨んだり、友人の悪口を言ったりしても、失ったお金は返って来ません。他人の意見に従うかどうかを決めたのは、あなた自身です。

マーケットができることは、動きを通してあなたに警告を発することだけです。マーケットがこうあるべきという動きを見せなかった場合、それを友人からのメッセージとして受け止めなければなりません。

マーケットに文句を言っても、マーケットはあなたの声を聞こうとはしません。あなたがマーケットの声に耳を傾けるのです。全ての責任はあなた自身が取るのであって、マーケットは取ってくれません。

・勝ちに酔いしれる

勝つことは気持ちのいいものであることは間違いないですが、そこから得るものは何もありません。失敗を通じて多くの価値ある教訓を得ることができるのです。負ける(損を出す)ことがマーケットへの洞察を深めるのです。

あまりに早くにうまくいき過ぎると、何が正しいかわからなくなり、大怪我をするリスクが大きくなります。私自身、株式のファンドマネージャーになりたての1990年代後半のインターネット・バブルにおいて、株で儲けるのは簡単だと大きな勘違いをしてしまい、その後、大きな痛手を被りました。

全てが順調である時にこそ、警戒心を強めなければなりません。安心感を覚え、自己満足に浸り、自惚れるようになった時には、マーケットの反転は近いということです。

株式を買うということは、誰かが取引の反対サイドにいて、その株式を売っているということを理解しなければなりません。

最悪の失敗は最高の成功の後に生じることが非常に多いのです。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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