これで納得! 5分でわかるNISAのメリット・デメリット

二宮清子
2015年7月10日 22時21分

NISAのメリット・デメリット

2014年1月、「NISA(ニーサ)」と呼ばれる少額投資非課税制度がスタートしました。配当や譲渡益が非課税になるというメリットばかりに目がいき、その陰に隠れたデメリットを知らないままに、「気づいたら損していた……」というようなことがないようにしたいものです。NISAのメリットとデメリット、また、その本質から考えるとどのような投資スタイルが合っているのかをご説明します。

そもそもNISAとは?

通常、株式や投資信託などから得られた配当や売却益には、所得税や地方税が20%課税されます。

NISAは、毎年100万円を上限とする新規購入分を対象に(※2016年1月から毎年120万円に増額)、その配当や譲渡益を最長5年間、非課税にする制度です。

主な概要は以下のようになります。

  • 非課税対象……非課税口座内の少額上場株式等の配当、譲渡益
  • 非課税投資額……毎年、新規投資額および継続適用する上場株式等の時価の合計額で100万円を上限(未使用枠は翌年以降に繰越不可)※2016年からは上限120万円に変更
  • 非課税投資総額…最大500万円(100万円×5年間)
  • 口座開設期間…2014年1月1日から2023年12月31日までの10年間
  • 保有期間…最長5年間。途中売却は自由(ただし、売却部分の枠は再利用不可)

2ef8f194f461623a920fd1b9a44b2c42(※毎年の投資上限枠は2016年から120万円に変更)

NISAのメリット

NISAのメリットは、やはり配当や売却益が非課税になることでしょう。

50万円で買った株式が60万円に値上がりして売却した場合、10万円の利益です。通常なら、10万円から20%の税金が差し引かれるので、手元に残るのは8万円ですが、NISA口座で売買した場合には、これが非課税になるので、丸々10万円が手元に残るという計算になります(手数料は考慮していません)。

中・長期で考えたときに、成長性の高い銘柄や、分割等で株価が上昇しやすい銘柄に対しては、大きな利益が出る可能性があるので、非課税のメリットを享受しやすくなります。また新興市場には、ミクシィやガンホーのように大化けする可能性を秘めている銘柄が多くあります。

したがってNISA口座では、成長の見込める低位株を一部保有しておくのも面白いでしょう。

NISAのデメリット

一方、NISAのデメリットとしては、次の2つが考えられます

①損益通算ができない

株式取引は、利益が出ることもあれば、損失が出るときもあります。通常(申告分離課税を選択した場合)、A銘柄で100万円利益が出てもB銘柄で50万円の損失が出ていたら、実質50万円の利益なので、この50万円に対してだけ課税されます。

しかし、NISA口座では非課税になるので、NISA口座で損失が出ても損益通算することができないのが残念です。

②損失の繰り越し不可

NISA口座では上場株式等の譲渡損失の繰越控除の対象になりません。

通常、確定申告をすると、その年の株や投資信託の損失を、翌年から3年間は繰り越すことができます。前年度に100万円の損失が出て、今年は50万円の利益が出た場合、損失を繰り越すとまだ50万円の損失になるので、税金はかからないのです。

このような制度がNISA口座では使えないことを覚えておきましょう。

この2つをまとめると、損失が出たときの節税ができない点が、NISAの大きなデメリットと言えます。

NISA口座の注意点

NISA口座で使える非課税枠の期間は、最長5年間です。5年後、NISA口座にある株式等については、以下のどれかを選択することになります。

  • ①売却する
  • ②課税口座(特定口座/一般口座)へ移す
  • ③他の新たな非課税枠へ移行する(ロールオーバー)

ここで注意してほしいことは、買値より値下がりしていた場合、移管時の時価が取得価格となる点です。したがって、その後で値を戻した場合は税金負担が大きくなります。

NISA口座と課税口座の分散投資

NISA制度には、大きな2つの目的があります。

  • ①将来への備えとなる資産づくりの促進(家計の安定的な資産形成の支援)
  • ②経済成長のために家計の金融資産を有効活用(家計からの成長資金の供給拡大)

    *参考:政府広報オンライン「新しい投資優遇制度「NISA(ニーサ)」がスタート!将来に向けた資産形成を考えるきっかけに」http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201306/3.html

このような目的が大前提にありますので、「資産運用を始めるきっかけ」として若い世代や初心者が始めやすいように、年間100万円未満の少額に対しては非課税にしますよ、という経済政策のひとつなのです(※2016年以降は上限120万円)。

【参考記事】NISAの目的とは? そこには日本政府が考える重要な鍵がある

したがって、ベテラン投資家やトレーダーにとっては、なんとも使い勝手の悪いものと思われるかもしれません。

しかし、ベテランだからこそ、NISA口座の非課税という恩恵と、課税口座の節税しやすい恩恵を上手く組み合わせることで、より素晴らしい投資環境が出来上がるのではないでしょうか。メリットとデメリットを理解したうえで、自分にとっての活用法を見つけてみてください。

【おすすめ】いくらから始められる? 株初心者が知っておくべき投資資金

[執筆者]二宮清子
二宮清子
[にのみや・せいこ]2001年に、ベストセラー『金持ち父さん、貧乏父さん』を読んでお金や投資に目覚め、株式投資を始めるがライブドア・ショックに巻き込まれ惨敗。 その後、FP資格を取得。 「お金に関することは自分だけが知っておけばいいことではなく、もっと多くの人が知っておくべきことではないか?」という思いから、多くの人にも 「幸せに豊かになるお金の使い方」「資産形成できる家計管理」 を伝えたいと志がめばえ、独立系FP事務所「幸せマネープラン」を設立。
最新記事
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格など投資の最終決定は、ご自身のご判断で行っていただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証するものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等にはお答えいたしかねますので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。また、本コンテンツの記載内容は予告なく変更することがあります。
お知らせ
» NTTドコモのマネーポータルサイト「dメニューマネー」に記事を提供しています。
dメニューマネー
» 国際的ニュース週刊誌「Newsweek(ニューズウィーク)」日本版ウェブサイトに記事を提供しています。
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
» ニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」に配信中。「経済」「マネー」「株・投資」ジャンルから、かぶまどをチェック!
SmartNews(スマートニュース)
トヨタを買って大丈夫?