IPO市場もいよいよ回復へ 人気のAI関連と復活IPOの結果は?【2月のIPOランキング】

石井僚一
2024年3月8日 12時00分

《「確実に儲かる」として個人投資家に人気のIPO株投資。しかし近年、そんな「夢の時代」にも陰りが……? IPOで上がる株と下がる株は何が違うのか。データから読み解く【IPO通信簿】》

2月に入り、2024年のIPO市場がスタートを切りました。5銘柄が新規株式公開(IPO)を行い、いずれも初値は公募価格を上回りました。幸先よいスタートを切った2024年2月のIPOを振り返ります。

いよいよ復活へ向けて始動か

1月はIPOが1件もなく、2月7日上場のSOLIZE<5871>が2024年IPOのトップバッターとなりました。

IPO市場のバロメーターとなる新興市場は、東証グロース市場250指数(旧・東証マザーズ指数)が2023年の低迷後、2024年に入って1月と2月はともに月足での陽線を付け、底値圏からの回復を見せています。1月はわずかな上昇に留まりましたが、2月は比較的しっかりとした上昇を見せています。

史上最高値を更新した日経平均株価の勢いには及ばないものの、年初の新興市場は、復活に向けてスタートを切った状態といえるのではないでしょうか。

2024年2月のIPOランキング

2024年2月は5銘柄がIPOを果たしました。その5銘柄について、公開価格に対して初値がどれだけ上昇(あるいは下落)したかを表す「初値騰落率ランキング」を見てみましょう。

いずれも初値が公開価格を上回っており、公募割れのない、順調な滑り出しとなりました。数は少ないながらも、バイオベンチャー(Veritas In Silico<130A>)のIPOもありました。

上の表をご覧になるとわかるように、この2月のIPO組から、証券コードにアルファベット(英文字)が入る銘柄が現れています。数字だけでは足りなくなったことが背景にあり、今後は、2桁目と4桁目(どちらか、または両方)にアルファベットが入るようになります。

なお、既存の銘柄についてはコードの変更はありません。

(参照)証券コード英文字組入れ _ 日本取引所グループ

2024年2月の気になるIPO銘柄

2月に新規上場した5銘柄から、東証スタンダード市場に上場したSOLIZE<5871>と、AI銘柄として人気を集めたVRAIN Solution<135A>を取り上げます。

・SOLIZE<5871>

SOLIZE(ソライズ)は、技術者派遣による設計支援や3Dプリンターによる試作・製品開発を、自動車業界中心に手がける企業です。

SOLIZEは、2009年2月に民事再生手続きを開始したインクスが前身です。インクスは2005年8月に「ものづくり日本大賞」経済産業大臣賞を受賞するなど、モノ作りベンチャーとして著名な企業でした。その後、経営破綻したものの民事再生手続きを経て復活し、今回見事にIPOを果たしました。

過去の業績と今期の業績予想は以下のとおり。

2021年12月期から連結決算を開始し、それ以降、業績は順調に拡大が続いています。2023年12月期は売上200億円まで増収を達成し、経常利益も8億円を突破しました。

順調な成長が続く企業であることから、公開価格1470円に対して初値2020円、初値騰落率37%での着地となりました。

公開価格ベースの予想PERは11倍で、東証スタンダードの平均PER15倍に比べて若干ディスカウントされた価格でIPOを行い、初値ベースではPER15倍。手堅いIPOとなっています。それでも、公開価格の時価総額88億円に対して初値での時価総額は121億円となり、100億円の大台を突破しました。

著名なモノ作りベンチャー企業が経営破綻後に復活してIPOに至る……という非常にドラマチックなストーリーを見せて、株価に派手さはないながらも、時価総額100億円を超えてIPOに成功しています。

・VRAIN Solution<135A>

VRAIN Solution(ヴレインソリューション)は製造業向けのAIソリューションを提供する、2020年設立のベンチャー企業です。2022~2023年のIPO市場で大きく人気化したAI関連のカテゴリーに入ります。

過去の業績と今期の業績予想は以下のとおり。

2020年3月の設立後、約4年で上場。立ち上げから短期間でIPOに至りました。

業績は手堅く、設立第1期から黒字を達成しており、売上も徐々に拡大しています。2024年2月期は売上高14億円、経常利益4.9億円を予想し、本格的な事業の立ち上げが見込まれています。事業の本格立ち上がりとともに上場を果たす、というIPOシナリオとなっています。

公開価格2990円に対し、初値は5190円で初値騰落率73%。公開価格での時価総額302億円に対して初値では524億円となり、500億円突破での着地となりました。

予想PERは公開価格時点で約90倍と、経常利益の規模(4.9億円予想)にしては非常に高い値付けでしたが、それをはるかに上回る初値をつけて、IPOに成功。

市場では2023年からAI関連銘柄が人気を集めていますが、国内のIPO市場では2022年頃からすでに人気化しています。2024年もIPO市場でのAI銘柄の人気は健在です。

最初のピークはどうなる?

公募割れなく幸先の良いスタートを切った2024年のIPO市場。3月は、21日から始まって計15銘柄のIPOが予定されています。年間を通したIPO件数としても、ここが最初のピークとなりそうです。

日経平均株価が4万円を突破する株高の中、3月のIPO市場もその波に乗っていけるのか。相場全体の動きとともに、新興市場の推移にも注目です。

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[執筆者]石井僚一
石井僚一
[いしい・りょういち]ベンチャーキャピタル勤務を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析などを得意とし、複数の媒体に寄稿中。なかでもIPO関連の執筆を数多く手がけており、IPO企業の目論見書のほとんどに目を通している。
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