IPOに当選しなくても大丈夫。セカンダリー投資ならチャンスは何度でもやってくる

岡田禎子
2021年1月13日 8時30分

《当選ありきのIPO投資には「どうせ当たらないでしょ」と思っている人も多いかもしれません。でも、上場後にやってくる2度目のチャンスがセカンダリー投資。IPO特有の株価パターンをうまくチャンスを活かすことで、リスクをおさえながら利益を手にできる可能性が広がります》

2度目のチャンス! セカンダリー投資

IPO(新規株式公開)は、公募で手に入れて初値で売却すれば高い確率で利益を得られることから、初心者にも人気の投資法です。

しかし、その公募に当選することは宝くじに喩えられるほどの難関。「どうせ当たらないし……」というため息も聞こえそうですが、ここで諦める必要はありません。セカンダリー投資なら、IPOで利益を得るチャンスが掴めます。

セカンダリー投資とは、IPOが上場して初値をつけたのちに株の売買を行うこと。誰でも自由に市場で売買でき、また何度でも儲ける機会があるのが魅力です。

IPO直後の株価はボラティリティー(変動幅)が大きいために、高いリターンが期待できますが、一方で大きい損失を抱えるリスクがあるのも事実。セカンダリー投資では、IPO特有の「パターン化」された値動きを捉えることで、リスクをおさえつつ利益を狙います。

3つのセカンダリー投資法

そんなセカンダリー投資には、代表的な投資法が3つあります。

(1)即金規制明け狙い

まず、IPO直後のセカンダリー投資でよく知られる投資法が「即金規制明け狙い」の投資法です。

「即金規制」とは、IPOに関して特別に証券取引所によって適用される市場ルールのこと。新規上場した株に人気が集まりすぎると、上場初日に初値が決まらないことがあります。そこで、取引所で早く初値を形成させるため、翌営業日から「即金規制」が適用されます。

即金規制のかかったIPOは、信用取引や受け渡し決済(現物株を引き渡して行う決済方法)が禁止され、「即金」でしか購入できなくなります。文字どおり、即利用できるお金のこと。証券会社でいう「預かり金」や「現金残高」のことで、つまり現金取引しかできない、ということです。

また、成り行き注文も不可で、指し値注文しかできません。これらの規制によって買い需要を減らし、売買を均衡させることで、早期の初値形成を促すのです。

それでも初値がつかなければ、3営業日、4営業日……と初値がつくまで即金規制が適用され続けます。初値がついた日の翌営業日からは、即金規制が解除されて、通常の取引となります。

・規制と解除をめぐる株価の典型的パターン

即金規制によって初値がついた銘柄は、翌営業日からは規制が解除されて信用取引や受け渡し決済も可能となるため、一気に資金が戻ってきて、株価が上昇しやすくなります。即金規制明け狙いの投資法は、この株価の値動きを利用するのです。

即金規制が適用されて初値がついた直後(当日)、株価は下落しやすい展開となります。なぜなら、売り需要が買い需要を上回るからです。

買い手サイドは、まだ規制によって信用取引や受け渡し決済が使えない状態であるために、買い需要が続きません。一方、売り手サイドでは、利益確定の売りや、ロックアップ解除によるベンチャーキャピタルの売りによって売り需要が強い、という状態になります。

(参考記事)被害者続出!?  IPO株の突如大暴落を招く「ロックアップ解除」とは

しかし、相場に詳しい投資家ならここをチャンスと捉えます。「初値がついた日の翌営業日には即金規制が解除される」→「信用取引などの資金が戻ってくる」→「株価が上がりやすい」ことを知って先回りして買う投資家が増え、その結果、大引けにかけては株価が戻ってくるのです。

この典型的なパターンを知っていれば、株価が下落したタイミングで買い、うまく値上がりしたところで売り抜けることで、利益を得る可能性が高まります。IPOの約3割に即金規制がかかるといわれているため、とても優位性のある投資法といえるでしょう。

ただし、ベンチャーキャピタルやストックオプションが多いIPOの場合は、売り圧力が強いために、株価は大きく崩れがちです。また、翌日の株価上昇も限定的になりやすいために注意が必要です。

・アララ<4015>

2020年11月19日にマザーズ市場に上場したアララ<4015>。上場初日は買い気配のまま取引を終え、即金規制となった翌日、3,080円(公募価格比+120%)で初値をつけました。直後は一時的に3,000円を割ったものの大引けにかけて上昇し、最終的には3,480円の高値引けとなりました。

(2)初値買い

セカンダリー投資法のふたつめは「初値買い」です。人気のIPOは公募価格より上で初値がついた後も大きく高騰して高値をつけることが多くなります。初値買いはこの動きを狙って取引する方法で、「初値で購入する」ことがとても重要です。

新規上場銘柄の気配値の上限は公募価格の2.3倍で、上場日当日に指し値注文ができるのは公募価格の4倍まで。そこで、寄り付き前に公募価格の2.3倍(*)〜4倍の間で指し値注文を入れておき、うまく初値で購入したら、株価が目標まで上昇したところで売却するのです。

(*実際には更新値幅+呼値となるため、価格帯によって異なります)

このとき、初値が3倍、5倍となるような人気銘柄を狙うと、初日に初値がつかず、上で説明した即金規制がかかって一旦株価が下落するリスクがあります。また、指し値注文した分の資金が拘束されるため、資金配分への注意も必要です。

狙う値幅についても、過去の経験則などから具体的な目標(例えば「5%程度の上昇」など)を事前に明確にしておくことが大切。もちろん、ベンチャーキャピタルやストックオプションなどのリスクがないかなどもチェックしておく必要があります。

・Sun Asterisk<4053>

2020年7月31日にマザーズに上場したSun Asterisk<4053>。初値は1,209円と公募価格700円の1.72倍となり、その後も勢いを増して株価はストップ高の1,509円まで上昇しました。

(3)公募割れ直後のリバウンド狙い

セカンダリー投資では、公募割れした銘柄でも儲けるチャンスがあります。

IPOの公募価格は同業他社や類似企業を参考に算出され、さらにディスカウントして売り出されます。つまり、初値がこの公募価格をさらに下回って公募割れした銘柄は、ファンダメンタルズ分析からすると割安で、とてもお得な株価になっている状態だと考えられます。

そのため、公募割れで初値がついた後も株価は下落しますが、割安と見た投資家のリバウンド狙いの買いが入り、値を戻します。

しかし悲しいかな、不人気銘柄の宿命で、大引けにかけて再びズルズルと値を下げるパターンが多くあります。公募株の換金売りやリバウンド狙い勢による利益確定の売りが出るためです。

というわけで、リバウンド狙いができるのは上場初日のみ。公募割れ銘柄は、不人気銘柄と認識されて投資家の目は他の銘柄に向かうため、翌日以降も株価を下げていくことが多いのです。

なお、公募割れしやすいのは、フレッシュさがなく不人気な東証1部、2部へ上場、または再上場した銘柄です。

(参考記事)ソフトバンクの悲劇は想定内 公募割れ銘柄に共通する5つの条件とは

・バリオセキュア<4494>

2020年11月30日に東証2部に上場したバリオセキュア<4494>。初値は2,150円と、公募価格2,250円を4.4%下回りました。その後2,220円まで値を戻したものの再び下がり始め、結局、公募価格を超えられず、大引けにかけては大きく値を崩しました。

IPOだって儲けるチャンスは何度もある

このようにセカンダリー投資では、IPOに特有のパターン化された値動きを捉え、チャンスを狙います。ここで紹介した方法以外にも、年末年始特有の動きや、東証1部上場銘柄のTOPIX組み入れイベントなど、セカンダリー投資に注目すれば、何度でも儲ける機会はやってきます。

ただ、そうは言っても、IPOは相場環境に大きく影響されることも忘れてはなりません。常に足元の状況を見ながら総合的に投資判断する必要があるのは、セカンダリー投資でも変わらないのです。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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