いまさら聞けない「S&P500」 ダウ平均との違いや上手な使い方、おすすめETFなど
《ニュースなどでよく耳にする「S&P500」という言葉。アメリカの経済を把握するには避けては通れない用語ですが、その意味や算出方法を知らない人も多いのではないでしょうか。「ダウ平均」との違いやバフェットもおすすめするETFなど、「S&P500」をもっと使いこなす方法を紹介します》
S&P500とは
「S&P500種指数」はアメリカを代表する株価指数のひとつ。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社により、ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場しているアメリカ企業のうち時価総額の大きいな500社をもとに算出されています(「S&P」は「スタンダード・アンド・プアーズ」)。
500社の内訳は、工業株400、運輸株20、公共株40、金融株40となっており、計40業種という幅広い産業の銘柄で構成されているのが特徴です。ニューヨーク市場の時価総額の約75%をカバーしていることから、機関投資家のベンチマーク(運用指標)として広く利用されているのです。
2021年6月15日時点における業種別比率と組入上位銘柄を見てみましょう(S&P500に連動することを目指す「iシェアーズ・コア S&P 500 ETF」を参照)。
・S&P500の業種別組入比率
・S&P500の組入上位5社
業種別比率を見ると、情報技術セクターが全体の約4分の1を占めていることがわかります。S&P500種指数は時価総額ベースの指数のため、特にGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)といった巨大IT企業の影響力は絶大なのです。
ダウ平均とS&P500の違い
アメリカを代表する株価指数といえば、「ダウ平均株価」も有名です。しかし、ダウ平均株価の構成銘柄はわずか30。そのうえ、「アメリカ企業」と言うよりもむしろ「世界企業」と言ったほうがいいくらいの巨大企業が占めています。
それに対してS&P500種指数は、ダウ平均株価の約17倍に当たる500銘柄で構成されていることから、より幅広くアメリカ経済の動向を把握するために役に立つ指数だと言えます。
〈参考記事〉いまさら聞けない「ダウ平均株価」 世界の相場を動かす30銘柄を注視せよ
S&P500で世界全体に投資する
S&P500種指数は、相場状況を知る指数として活用できるだけではありません。S&P500種指数を対象にした投資信託やETF(上場投資信託)を購入することで、アメリカ企業に幅広く分散投資することができます。
もちろんダウ平均株価を対象とした投資信託やETFもありますが、ここでもやはり銘柄数の差が大きくモノを言います。
S&P500種指数の構成銘柄は、ニューヨーク証券取引所やナスダックの中でも主要な500社です。すべてアメリカ企業ですが、ダウ平均株価にも採用されている銘柄を筆頭に、世界を代表するような企業も多いため、S&P500種指数への投資は世界経済全体への投資ともいえるのです。
あのバフェット氏もイチ押し
「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、会長兼CEOを務めるバークシャー・ハサウェイ社の株主に向けた手紙(バフェットからの手紙)の中で、自分の妻の遺産について、90%はS&P500種指数に投資するようにと述べています。
アメリカにはアップル<AAPL>や「グーグル」の親会社であるアルファベット<GOOGL>など魅力的な企業がたくさんありますが、それゆえに、一般の個人投資家が銘柄を絞るのは難しいでしょう。
そこで、アメリカを代表する企業に幅広く分散投資するには、S&P500種指数に連動する投資信託やETFの購入を検討したほうがいい──バフェット氏はそう考えているのです。
〈参考記事〉よく聞くETFって? 個別株にはないメリットと見過ごされがちな落とし穴
S&P500に連動する投資信託とETF
S&P500種指数に投資する代表的な方法は、S&P500種指数に連動する投資信託やETFの購入です。ここでは、日本の証券会社などで購入できる投資信託とETFを2つずつ紹介します(数値は2021年6月17日時点)。
[投資信託]SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
- 基準価額:14,877円
- 運用手数料(信託報酬など):0.0938%
世界最大級の運用会社であるバンガード(V=Vanguard)とSBIグループが協力し、S&P500種指数への投資を低コストで運用できるように開発された投資信託です。
バンガードはアメリカを本拠とする世界最大級の資産運用会社。1976年に世界で初めて個人投資家向けのインデックス・ファンドを設定したことで知られています。2018年末時点で世界のインデックス運用商品の約4割のシェアを誇り、世界ナンバーワンとなっています。
また、投資家に最良の投資機会を提供するため、信託報酬などの運用手数料が0.0938%という業界最低水準のコストを実現させています。バフェット氏もS&P500種指数に連動する低コストファンドへの株式投資には好意的な見方を示しています。
購入は100円と少額から可能。長期で資産形成する投資家に適した投資信託です。
[投資信託]eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- 基準価額:16,209円
- 運用手数料(信託報酬など):0.0968%
「eMAXIS Slim」は、三菱UFJ国際投信が運用する低コストのインデックスファンドシリーズです。
業界最低水準の運用コストを目指しているため個人投資家の人気も高く、「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year2020」では「eMAXIS Slim」シリーズが20位以内に6本もランクイン。この「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」も9位となりました。
(参照)eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) _ eMAXIS
[ETF]バンガード・S&P500 ETF(VOO)
- 基準価額:387.96ドル
- 運用手数料(信託報酬など):0.03%
商品取引所に上場している投資信託がETF(上場投資信託)です。したがって、通常の株式と同じように取引することができます。
また、このETFの場合、同じバンガードのものでも、運用手数料が先ほどのSBIの投資信託よりもさらに低い0.03%になっていることも魅力です。ただし、取引単位が1口単位なので、現在で言えば最低約4万円の投資資金が必要です。
また、ETFは売買のタイミングを自分で決める必要があるため、手間をかけたくない人や積立投資をしたい人は投資信託のほうが適しているでしょう。一方、タイミングを計りながら積極的に売買したい、運用コストを抑えたいということであれば、こうしたETFをうまく活用することができます。
(参照)ファンド概要|海外ETF情報|国内_海外ETF[モーニングスター]
[ETF]iシェアーズ・コア S&P 500 ETF
- 基準価額:422.53ドル
- 運用手数料(信託報酬など):0.03%
iシェアーズは世界のETF市場の約3割を占める、業界のマーケットリーダーです。ETFの純資産残高は約2.7兆ドル(2020年12月末時点)で、世界中の機関投資家や個人投資家から高い支持を得ています。
このETFの運用手数料は0.03%と低水準を実現。バンガードと同様、iシェアーズもコストが非常に低いので、長期保有にも適しています。
(参照)iシェアーズ・コア S&P 500 ETF|ブラックロック
S&P500をもっと使いこなすには
アメリカの証券取引所に上場する代表的な500銘柄で構成されているS&P500種指数。指数に連動する投資信託やETFを購入すれば、幅広い産業に分散投資することができます。
ただし、IT企業など時価総額の大きい銘柄に影響を受けやすいという特徴もあるため、組入比率の高い銘柄の動きには注意を払っておいたほうがいいでしょう。
いずれにしても、ただ日々の参考数値にしかすぎなかった株価指数そのものを実際に自分で売買してみることで、また違った見え方をするようになるはずです。
アメリカ株投資をしてみたいけれど個別銘柄を選ぶことに二の足を踏んでいる人や、より幅広い分散投資を考えている人には、S&P500種指数に連動した投資信託やETFを購入することでアメリカを代表する企業にまるごと投資できるのは、かなりお得な手段と言えます。
株式市場には様々な株価指数があり、それらを対象とした投資信託・ETFも数多く販売されています。ぜひ、株価指数を大いに活用することを通じて株式市場への理解を深め、世界経済の流れを読み解くヒントをつかんでください。