銘柄はどうやって選べばいいのか? 一流の投資家が教える「魅力的な投資先」の条件とは

朋川雅紀
2023年7月10日 18時00分

hugo / Adobe Stock

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魅力的な投資先とは?

いざポートフォリオを実際に構築しようとしたとき、一朝一夕で組み入れ銘柄を見つけるのは事実上、不可能です。日常的に、投資対象を見つける努力をしなければなりません。

ポートフォリオを構築するにあたっては、まず大前提として、魅力のある企業を先にピックアップしておくことが必要になります。

では、投資に値する魅力的な企業とは、どんな企業でしょうか。ひとことで言えば、魅力的な投資先とは、収益力が高い(成長が期待できる、もうかっている)企業です。  

そこで、「収益力が高い(成長が期待できる、もうかっている)企業」とはどのような会社かを考えてみたいと思います。

もうかるビジネスに必要なこと

その前に、「もうかるビジネスとは何か」を考えましょう。

 「ビジネス」というのは、顧客に「価値」をもたらします。例えば、メーカーであれば、原材料をもとに製品を作り出すことで、価値を作り出します。

価値を創出するには、企業が払ったコスト以上のお金を、顧客に満足してもらったうえで支払ってもらわなければなりません。

自動車メーカーの場合、鉄や部品などを調達して、機械や人の力を借りて、自動車を作り上げます。顧客は、鉄や部品を自分で買ってきても自動車は作れませんから、調達コストより高いお金を払っても自動車を買ってくれます。

しかし、こうした価値の創造が、即座に企業のもうけにつながるとは限りません。「競争」の激しさによって状況は変わってきます。競争が激しければ、本来、顧客が喜んで払ってくれると思われる価格よりも安い価格で、企業は売らなければなりません。

あなたが、太陽の日差しがさんさんと照りつける真夏の観光地にいるとしましょう。

ここでは、水の需要は高いと言えます。仮に、水を売っている業者が1社だけであれば、多少高くても顧客は喜んでその水を買うでしょう。しかし、水を売っている業者がたくさんいたらどうでしょうか。協定でも結んでいない限り、価格はコストぎりぎりまで低下するかもしれません。

このように、企業の「もうけ」は、顧客に提供している価値ばかりではなく、競争の激しさによっても決まります。ビジネスでもうけるということは、顧客の欲しいものを提供して、かつ競争に勝つことなのです。

魅力的な企業を見つける方法──SWOT分析

魅力的な投資先企業を見つけるには、企業がその業界・業種内でどれだけ長く競争上の優位性を維持できるかを見極めることが必要になってきます。つまり、成長の「持続性」の判断が重要です。

競争の優位性がどれだけ続くかを判断するには、まず、その業界で成功するための鍵、つまり「キー・サクセス・ファクター(KSF)」は何かを考える必要があります。製薬会社であれば研究開発力がKSFですし、日用品メーカーなら商品開発力やマーケティング力がKSFになります。

先に述べたように、その業界で成功するには、以下の2つの条件が必要になります。

  1. 顧客が望んでいるもの(さらには、顧客が気づいていない潜在的な要望)を提供する
  2. 競争に勝つ

そしてKSFを念頭におき、投資対象企業のSWOT分析を行います。

SWOTとは、強み(Strength)と弱み(Weakness)、機会(Opportunity)と脅威(Threat)を指します。投資を行う前には、「企業そのもの」についての分析と、「その企業をとりまく環境」についての分析が必要です。SWOT分析は、そのための考え方と手法を体系化したものです。

「企業そのもの」についての分析とは、企業の(競合相手と比較した相対的な)強みと弱みを明らかにすることであり、「その企業をとりまく環境」についての分析とは、企業を取り巻く顧客・競合他社・政府の政策・経済状況などを考慮して、ビジネス上の機会と脅威を明らかにすることです。

企業の 「強み/弱み」は、企業の有形・無形の経営資源を評価し、これらが競合他社より優れているか劣っているかで判断して導いていきます。具体的には次のような要素です。

  • 商品力……ヒット商品を生み出せるか?
  • コスト体質……固定費と変動費の関係は?
  • 販売力……顧客に適切に提案できるか?
  • 技術力……他社が簡単に真似できない技術があるか?
  • 評判やブランド
  • 財 務……借入の依存度は?
  • 人 材……やる気のある優秀な社員がいるか?
  • 意思決定力……適切な判断が適切なタイミングでできるか?

 ビジネス上の「機会/脅威」は、企業が目的を達成するうえで影響を受けると考えられる外部環境をマクロとミクロから考え、その促進要因と阻害要因を明らかにすることです。

  • マクロ要因……政治・経済、社会情勢、技術進展、法的規制など
  • ミクロ要因……市場規模・成長性、顧客の価値観、価格の傾向、競合他社、協力会社など

このSWOT分析においてどのような項目を取り上げるかについては、特に統一的な基準があるわけではありません。また、「強み/弱み」「機会/脅威」は相対的なものであり、外部環境の変化によって強みが弱みに転じたり、機会が脅威になったり、ということがあり得ます。

利益をもたらしてくれる企業を見つけるには、これらの視点を持ちながら、日々さまざまな企業の分析を重ねる必要があります。「おいしい銘柄」は、ある日突然どこかから降ってくるわけではないのです。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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