株式投資で勝つ極意は攻めか、それとも守りか。大成功する投資家に求められる条件とは

朋川雅紀
2024年2月20日 8時00分

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

攻めか、それとも守りか

株式投資において、長期間にわたって市場平均を上回る実績を残すためには、どうすればいいでしょうか。すでにおわかりだと思いますが、それができる投資家は、決して多くないはずです。

やはり、積極的に攻める投資が望ましいのでしょうか。では、仮に「攻めの投資」を行うととして、どうすればうまくいくのでしょうか。言い換えるならば、成功するための条件とはどのようなものがあるか、ということです。

投資で大成功を収めるための条件となるものを、いくつか考えてみます。

・忍耐力

まず、「攻めの投資」を行って、すぐに大きな成果につながるとは、あまり考えないほうがいいでしょう。

割安に放置されていた株がその本来の株価の価値に追いつき、キャピタル・ゲインを生むようになるまでには、長い月日がかかるかもしれません。いったん株を買ったら、長期間保有するという覚悟が必要です。結果はすぐに出ないかもしれないと思っておくべきです。

・勇気

「攻めの投資家」は、自分の方針に反対する人を押し切れるだけの頑固とした信念と勇気と、そこから生まれる自信を持たなければなりません。というのも、投資家は、決断を下すのが非常に困難なときに決断を下さなければならず、かつその決断に対して責任を持たなければならないからです。

決断力は、投資の世界で決定的に重要なものです。もちろん、時には判断ミスもあるでしょう。しかしながら、大部分の場合、正しい判断を行わなくては投資で大成功することはできません。

意思決定を行う際には、詳細な現状分析を行い、周りの助言も検討する必要がありますが、最終的な決定は、周りの人の助言とは違ったものになることもあるはずです。それでも、基本的に正しい判断をなしうる優れた投資家、つまり本物の投資家とは、周囲と違う意思決定を恐れないものです。

・常識

「攻めの投資」で成功するために、天才的な知性は必要ありません。人並みの知性で十分足ります。しかしながら、知性だけではうまくいきません。常識も重要になります。「常識」とは、状況判断を下す現実的な能力を意味します。この常識がないばかりに失敗してきた投資家は数多くいます。

・精神的な安定

忍耐力とも通じるものですが、意味するところはさらに深くなります。市場を取り巻く強気ムードや弱気ムードにいちいち振り回されないためには、精神的に安定していることが欠かせません。

なぜなら、事実と、情緒の色眼鏡で見た幻想とを区別するためには、精神的な安定が必要だからです。ほとんどの事実は、「感情」という厄介なものを引き連れて投資家のところに届きます。この2つを区別することは、一流の投資家でも簡単なことではありません。

・ハードワーク

「攻めの投資家」には、綿密な調査・分析が欠かせません。そして、それを実行するには、多くの時間と労力が要ります。

たとえば、興味のある企業や業種については、詳細に知っておく必要があります。その企業の業界での地位や、業界の動向、さらに詳細な財務分析にも通じていなければなりません。プロの証券アナリスト並みである必要はないにしても、財務状況と収益力を評価し、将来の収益見通しを立てなければなりません。会計と企業財務の知識が必要なゆえんです。

もちろん、証券会社の調査能力を借りることはできます。しかしながら、出てきた分析結果をどう評価するかは、投資家自らが決めるべきことです。

過度な分散は避けること

保険のために投資先を分散すれば、リスクを少なからず軽減することができます。しかしながら、何でもいいから分散すればいい、というものではありません。そこには、一定の判断が求められます。

もちろん、大きなポートフォリオなら、主要銘柄にまんべんなく分散すれば、個別銘柄のリスクは十分抑えることはできます。しかしながら、20〜30銘柄に限定するのであれば、ある程度の判断を下す必要が出てくるのです。

当然ながら、「守りの投資」をするのであれば、投資先を十分に分散しなければなりません。

しかし、平均以上のリターンを狙う「攻めの投資」をするのであれば、あまり分散し過ぎてもいけません。分散し過ぎると、一部の損失を他の利益で埋められる一方で、ポートフォリオ全体のリターンを押し下げてしまうからです。

リスクを分散し過ぎて大成功を収めた投資家はいません。もしも高いリターンを獲得することを目指すなら、投資先を分散し過ぎてはいけないのです。

あなたは攻めるか、守るか?

以上の条件を満たすことができなければ、いくら「攻めの投資」を試みたところで、「守りの投資」した場合に比べて低いリターンしか獲得できないでしょう。それなら、いっそのこと、最初から「守りの投資」に徹すべきだと思います。

実際、「攻めの投資」に成功する近道などありません。大きなリターンを狙うのであれば、「守りの投資」よりも一層の努力と忍耐力が必要なのです。

どんな分野であれ、努力をせずに大きなリターンなど望みえません。重要なのは、攻めるにせよ、守るにせよ、一度自分のスタイルを決めたら、それに合った原則をとことん貫くことです。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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