迫る東証の市場再編。そのとき、投資家の動きはどう変わるのか

山下耕太郎 2021/04/13

《東京証券取引所による上場市場の再編作業が、2021年から本格化します。各市場の位置づけが明確になり、既存企業はどの市場に入るかの選択次第では株価に影響することも。海外投資家の動向にも変化が現れるでしょう。では、個人投資家はどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか》

東京証券取引所の4つの上場市場

現在、東京証券取引所東証)は4つの市場に分類されています(Tokyo Pro Marketを除く)。2021年4月8日時点の上場企業数は以下の通りです。

  • 東証1部:2194社
  • 東証2部:474社
  • ジャスダック:666社
  • 東証マザーズ:355社

ここで、現在の各市場にはどんな特徴があるのかをおさらいしましょう。

・東証1部

東証でもっとも大きな規模で、上場会社の約6割が東証1部に属しています。ほかの株式市場と比べて審査基準が高いため、トヨタ自動車<7203>やソニー<6758>など日本を代表する大企業が多く上場している一方で、上場廃止の基準が低く、市場の新陳代謝が進まないという問題点も指摘されています。

・東証2部

東証1部に比べて時価総額(株価×発行済株式数)の小さい中小型株が上場しています。東証2部に上場した後、株主数や時価総額など東証1部銘柄の基準を満たせば、1部に昇格できます。

・ジャスダック

成長企業が集まる市場で、アメリカの証券取引所であるNASDAQ(ナスダック)に倣って名前がつけられています。新興企業向けの市場ですが、歴史のある企業も上場しているのが特徴です。一定の規模と実績のある企業を対象とする「スタンダード」と、将来成長する可能性がある企業を対象とする「グロース」の2つの区分があります。

・東証マザーズ

成長企業が中心の市場で、新興のネット企業などが多いという特徴があります。上場基準が東証1部や2部よりも緩く設定されていて、高い成長性が重視されます。そのため、赤字であるベンチャー企業が上場することもあります。

〈参考記事〉東証1部と東証2部はどちらがいいのか? 個人投資家が知っておくべき違いとは

このように東証には、業績が順調とはいえなかったり、時価総額がかなり小さかったりする企業が数多く上場していることも少なくありません。また、新興市場が複数存在しているなど、市場区分が曖昧であることも問題視されてきました。

それぞれの株価動向を見てみると、2020年はコロナ禍で新興市場であるマザーズの上昇が話題になりましたが、2021年に入ってからは東証2部の勢いが目立っており、2020年末との比較で15%近くの上昇となっています。

〈参考記事〉日経平均3万円はバブルなのか? 史上最高値へ向けて必要なものとは

各市場で影響力の大きい投資家は?

市場で売買するのは、個人投資家や機関投資家、国内投資家から海外投資家までさまざまです。株式市場の全体像を把握するには、その市場では、どんな投資家が、どのくらいの規模の売買を行っているかを知っておくことも大切です。

東証の4市場の売買状況を見てみましょう(参照:JPX「投資部門別 株式週間売買状況[金額]2021年第5週(3月29日~4月2日)」)。

  東証1部 東証2部 ジャスダック 東証マザーズ
自 己 15.8% 3.4% 3.5% 3.8%
委 託 84.2% 96.6% 96.5% 96.2%
  海外投資家 68.6% 38.9% 36.9% 38.6%
個人 23.5% 56.5% 58.3% 57.2%
法人 7.0% 2.2% 2.9% 2.5%

売買の投資主体は、大きく「自己」と「委託」に分かれます。通常、投資家は証券会社を通じて注文を委託するため、投資主体は「委託」に分類されます。

東証1部は委託取引の約7割が海外投資家なので、海外市場の影響を強く受けることが予測できます。また、大型株が多いせいか、国内の個人投資家の比率はほかの市場と比べて低めです。

一方、東証2部・ジャスダック・東証マザーズの委託取引では個人投資家の比率が50%を超え、海外投資家を大きく引き離しています。

このことから、東証1部は海外の株式市場の影響を受けやすく、ほかの3つの市場では比較的海外市場の影響を受けにくいといえるのです。

2022年4月、東証が生まれ変わる

企業の質の向上などを目的とし、現在の「東証1部」「東証2部」「ジャスダック」「マザーズ」の4市場は、2022年4月から新市場への移行が予定されています。そして、2021年から上場市場の再編作業が本格化すると見られています。

市場区分は4つから3つへ

新しい市場区分は、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3市場。既存の上場企業は、基準に合わせて新市場区分を選択することになります(参照:JPX「新市場区分の概要等について」)。

プライム市場」は、機関投資家の対象になるグローバル向けの市場です。現在の東証1部における委託取引の約7割は海外投資家ですが、その比率がさらに高まる可能性があり、より海外市場の動向を受けやすい市場になると考えられます。

スタンダード市場」は中堅企業向けの市場。現在の東証2部やジャスダック(スタンダード)の銘柄がメインになると考えられます。東証2部やジャスダックは個人投資家の比率が高いので、個人投資家の動向に影響を受けやすい市場になりそうです。

最後に「グロース市場」は新興市場向けの市場で、ジャスダック(グロース)とマザーズの銘柄がメインになります。マザーズ指数では海外投資家の比率が上がってきているので、海外市場、とくにハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数の影響が高くなると考えられます。

市場再編で投資家の行動は変わるのか

今回の市場再編の主な狙いは、上場基準の厳格化によって企業努力を促すことや、市場区分の明確化により投資家が銘柄を選びやすくなり、市場を活性化させることにあります。

この改革により、株主還元の強化など、企業の行動に好影響を与えることが期待できるほか、隠れた優良企業など、投資家にとって新たな投資対象が増える可能性もあります。また、特にプライム市場で存在感が高まりそうな海外投資家の動向にもより注意を払う必要があるでしょう。

市場再編によって企業や投資家たちの行動にどのような変化が出るの出るのか注目です。

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[執筆者]山下耕太郎
[やました・こうたろう]一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌 株窓アワード2020大賞
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