投資における「成功と失敗」を考える。一流の投資家が結果にこだわらない本当の理由とは

朋川雅紀
2023年6月13日 12時00分

ra2 studio / Adobe Stock

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投資における「成功と失敗」 

投資で利益を上げたいのは山々ですが、損を出すのが怖くてなかなか踏み出せず、何もできずに投資から目をそらしてしまうケースは珍しくありません。自分は優秀ではないから理想(将来のなりたい姿)など実現できないと思い込んで、やる気を育てられない例もあります。

こうした事例に該当する投資家はおそらく、勝ち負けの違いに感情的な反応をしてしまっており、その結果、目的に集中できていないのだと思います。負けることに対する恐怖が意識の根底にあり、それが投資のあり方や考え方に悪い影響を及ぼしているのでしょう。

「結果の良し悪し」に一喜一憂しない

「結果の良し悪し」に一喜一憂してはいけません。自分で勝手にふさぎ込んだり、怒ったり、感傷に浸ったりしてはいけません。

投資には「損失は付き物」です。損失が生じれば不安を感じるのはわかりますが、そうなってもうつむいてはいけません。「自分には出来ないんじゃないか」などと思い込まず、ひたすら前を向くことが大切です。

損失を出した(失敗した)ときや計画通りに運ばないときは、進んでその事実を認め、自分と自分のゴールとのつながりを取り戻さなければなりません。損失の発生を認めなければ、かなりのエネルギーが自己正当化に消費されてしまいますが、損失をいさぎよく認めれば、このエネルギーを開放し、他の場面で役立てることが出来ます。

現実とは「ある出来事の反映であって自分自身の反映ではない」ということを理解すべきです。嫌悪感を持つ必要はなく、努力をやめる必要もないのです。現実とは、現在の自分と理想の自分との距離を測る物差しに過ぎないと考えればいいのです。

損失への対応を考える

投資で損失を被ったら、もう一度、目的達成のコミットメントを思い出してください。そして、目の前の課題に集中するには何をしなければならないかを考えましょう。

これまで何が欠けていたかを考え、修正し、結果を出すために必要なことを着実に実行していれば、損失にもちゃんと対処できるようになります。そうすれば、損失というピンチ(危機)は成長や飛躍のチャンスへと一瞬のうちに変貌します。

損失を抱えたら、自分のゴールは何か、という原点に立ち返らなければなりません。

ゴールの到達を防げる恐れのある損失拡大を未然に防ぐには、どのポジションを小さくすべきかを考えなければなりません。損失を抑え、そして具体的な成果を上げるためにはどんな調整をすればいいのかは、ゴールというレンズを通してみれば、自ずと見えてくるでしょう。

損失の発生は避けられません。しかしながら、損失を取り戻せるかどうかは、その損失にどう対処するかで決まります。 

勝ちにも注意が必要

敗北を恐れる気持ちが問題を招くことは誰にでも理解できるでしょうが、実は、勝利も様々な問題を引き起こします。負けると気分が落ち込んでしまうのと同様に、勝つと気持ちが舞い上がってしまい、集中力が散漫になってしまうことがあります。

投資家は勝ちを収めると自分を高く評価しますが、これが誇大妄想につながってしまうことがあります。負けると他人のせいに、勝つと自分の手柄にする光景はよく見られます。

成功するのは意外と簡単かもしれません。問題は、その成功に酔ってしまわないか、自分は絶対に失敗しないと思い込んでしまわないかということです。自分の力を過大評価してしまい、同じようにやっていればいつも同じように成功すると思い込んでしまうことはとても危険なことです。

結果にこだわり過ぎない

結果にこだわり過ぎると、投資の成功と自分自身の存在意義との区別があいまいとなり、柔軟性や創造する自由を失ってしまうことがあります。どんな犠牲を払ってでも成功したいと考えてしまうと、過大なプレッシャーを感じてしまい、自分のイメージや他人の目ばかりが気になって成功してもほとんど満足を得られないこともあります。

失敗するかもしれないという恐怖は、自己成就的な予言となって失敗の可能性を押し上げてしまいます。失敗を恐れるあまりやめたいという気持ちが強くなったり、緊張して思ったような成果が出せなったりするのです。

勝つため、儲けるために投資をすることは疑う余地がありません。しかしながら、勝つことが最大かつ唯一の目的だとしたら、負けを受け入れることが難しくなってしまうことを十分に理解しなければなりません。負ける確率も十分あることも承知しなければなりません。

成果と呼ばれるものは、「自分がどの程度うまくいったか、何が欠けているかを教えてくれる物差し」に過ぎないということを理解しなければなりません。

結果と自分を混同し、いい結果が出るのは自分の能力が高いから、などと考えることもあるでしょう。

しかしながら、経験豊富な投資家は、結果に一喜一憂しないようになります。結果というものは、このまま続けていれば自分の理想に近づけるか、戦略に欠けているものはないかを確認するための材料のひとつにするだけなのです。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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